今回はある歌についての話ですが、実は筆者はこの話は以前から何となく知っていて、本当はこのお話の他にも何個かの話を合わせて一つの動画にする予定だったのですが、調べてみると思っていた以上に内容が濃かったので、単体の記事にすることにしました。
なので、なんとなく知っているという方もぜひ最後まで見ていてもらえると嬉しいです。
1936年2月、ハンガリーの首都ブダペストで、ブダペスト市警が靴屋の主人であるジョセフケラーの死亡現場を調査中に奇妙な遺書を発見しました。自殺したケラーが書き残したその走り書きのような遺書には、とある歌の一節が引用されていました。自殺者が歌の一節を遺書に残すことは特に珍しいことでもないですが、しかしこの歌だけは特別でした。その歌の名は「「暗い日曜日」」。
ブダペストではすでにこの歌に関連した17人の自殺者が出ていた。そしてこの件以外にも、バーでバンドがこの曲を演奏した途端、突然男二人がその場で拳銃自殺した。14歳の少女が「「暗い日曜日」」のレコード盤を抱きしめたままドナウ川で入水自殺した。80歳の老人が「暗い日曜日」をかけながら7階の窓から飛び降りた。またバーで飲んでいた初老の紳士がバンドに「暗い日曜日」をリクエストするなり店の外に歩き出して、頭を銃で撃っていた。この曲にまつわる自殺が相次ぎ、現在までに157名のハンガリー人がこの曲に関連してなくなったと言われています。
また第二次世界大戦中、ユダヤ人がナチスドイツによって迫害され、多くのユダヤ人が命を落としていた時代。ユダヤ人であり、ヴァイオリンの名手だったロシェフゲームは、ヴァイオリンの腕を買われ、強制収容所に送られることを免除され、なんとか迫害を免れることができていました。ロシェフはナチス軍の親衛隊付のバイオリン奏者として若いナチス親衛隊に向けた演奏会を定期的に行っていました。
しかし、ある時から退院の中から異常な数の自殺者が出始めます。他の隊員の話によると、酒場で酒を飲んでいて突然ふらふらと外へ出ていて拳銃で自殺するとのこと。これについて調査した結果、なんとロシェフが演奏会の度に「暗い日曜日」を演奏しており、ユダヤ人迫害行為や戦争に対し、まだ慣れきっていない若い兵士の精神に揺さぶりをかけ、自殺に追い込んでいたことが判明しました。
これによりロシェフは死刑を宣告されることになりました。史上唯一の音楽を使った暗殺者のロシェフゲームは、死の間際に「音楽すらもがユダヤの怒りだと知るがいい」、「君たちの命は僕の指先だけで操られていたということを忘れるな」という言葉を残し、死んでいったと言います。
自殺の聖歌と呼ばれる「暗い日曜日」は、1933年にハンガリーで発表された曲であり、1936年には英語でのカバー曲も作られています。歌詞の内容は、ある日曜日に女性が亡くなった恋人を思い嘆くというもので、最後は自殺を決意するという一説で終わります。この曲は作曲者のシェレシュが、元恋人にもう一度交際してもらうように会いに行ったところ、彼女は服薬自殺をしていて、その失意と絶望の中作られた曲とのことです。そしてその後、作曲者であるシェレシュ本人も投身自殺をしています。
そしてついには「暗い日曜日」は世界各国で放送禁止になりました。しかしこれで死の連鎖が止まりませんでした。ベルリンでは若い女性が首吊りで命を絶ち、その足元には「暗い日曜日」のレコード盤が置かれていました。またニューヨークでは、ガス自殺した女性が遺書の中で自身の葬式で「暗い日曜日」を流すようリクエストしていました。ローマでは、自転車に乗っていた少年がふと浮浪者の前で立ち止まりました。少年はポケットの有り金を全て浮浪者に手渡し、ふらふらと川へ飛び込み、死亡しました。後の調査で、その時居合わせた浮浪者はこう語っています。「私は「暗い日曜日」を口ずさんでいただけだ」と。
さらにこの曲は日本にも影響を及ぼしており、日本では1970年代にジャズサックス奏者の阿部薫さんがこの曲をカバーし、その後本人は1978年に睡眠薬の多量摂取によってなくなっています。また阿部さんの妻であった作家である鈴木泉さんは、1986年に首を吊って自殺しています。
ここで「暗い日曜日」の日本語訳の歌詞をご紹介したいと思います。
暗い日曜日
両腕に花をいっぱい抱えた
私は私達の部屋に入った
疲れた心で
だって、私にはもうわかっていたのだ
あなたは来ないだろうと
そして私は歌った
愛と苦しみの歌を
私は一人ぼっちでいた
そして声を殺してすすり泣いた
木枯らしが呻き叫ぶのを聞きながら
暗い日曜日
苦しさに耐えかねたら
私はいつか日曜に死のう
命のろうそくを燃やしてしまおう
あなたが戻ってきた時
私はもう逝ってしまっているだろう
椅子に座ったままで、
目を見開いて、
その人にはあなただけを見つめている
でも、どうか怖がらないで
私はあなたを愛しているのだから
暗い日曜日
歌詞以上になるのですが、一応曲自体も YouTube で聴くことができるので、動画リンクを貼っておきますが、仮にこの曲を聴いて何かあったとしても筆者が責任を取ることはできないので、くれぐれも自己責任で視聴されるようお願いいたします。
少し現実的なお話をすると、「暗い日曜日」によって世界中で数百人が自殺したと言われてますが、実際にその多くはこの曲と自殺との因果関係は明確には証明されていないそうです。
朝日新聞の記事によると、ハンガリーで1983年に出版された「暗い日曜日」と自殺との因果関係を調査した書籍では、この曲に関連した自殺は5人のみであり、ハンガリー人のうち数百人が自殺したというのは誇張であると指摘しているそうです。
また多くの自殺者が出た背景としては、またさっきも少し触れましたが、当時のハンガリーではナチスドイツによる軍事侵攻の危機が迫るなど、自殺者が出てもおかしくないような世相だった、という一面もあったようです。時代背景の影響もあったにせよ、裏を返せば少なくともこの曲に関連した自殺が分かっている範囲だけでも、5件があるというふうにも言えるかなと思うので、確実に判明していないものも含めると、実際はこの曲に関連した自殺というのはもっと多いのかもしれません。
また1999年には「暗い日曜日」というタイトルで映画にもなっていて、後は21世紀少年の作者である浦沢直樹さんの「パイナップルアーミー」という作品にも「暗い日曜日」を題材としたエピソードが出てきたりもします。
今回はすこし重々しい話題でした。気持ち回復には、クラシック音楽を聴きましょう!気になる方はこちらの「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの生涯と名曲を厳選解説!」を読んでみてください!
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