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監督 | 森田芳光 |
評価 | 3.04 |
解説
渡辺淳一のベストセラー小説を「それから」の森田芳光(監督)、筒井ともみ(脚色)のコンビで映画化した不倫ドラマ。主演は役所広司と黒木瞳。大胆なセックス描写が話題になった。中年を過ぎ、仕事も家庭も思うように行かず、人生の目的を失いかけていた久木はカルチャースクールの書道講師を務めていた倫子と知り合う。許されぬ恋と知りつつも、ふたりの愛の炎は燃え盛り、いつしか片時も離れることができなくなり……。
監督 | 森義仁 |
評価 | 3.63 |
解説
[Netflix作品]作家などとして活動する燃え殻の小説を原作に、ドラマ「恋のツキ」などの森義仁が監督を務めたドラマ。普通とは違う人物を目指すものの何者にもなれなかった男性が、25年という月日を振り返る。『アンダードッグ』シリーズなどの森山未來、『タイトル、拒絶』などの伊藤沙莉、『草の響き』などの東出昌大、『TOURISM』などのSUMIREのほか、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人らが出演する。
あらすじ
1995年。佐藤(森山未來)は、文通相手のかおりと原宿のカフェで会う。「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」と言われ、普通じゃない自分を目指していた佐藤は、その言葉を支えにテレビの美術制作会社で懸命に働きながら小説家を目指す。その後かおりが去り、小説家にもなれなかった彼は、テレビ業界の片隅で働き続けていた。バーテンダーのスー(SUMIRE)との出会い、恋人の恵(大島優子)との別れなどを経て、気が付けば佐藤は46歳になっていた。
監督 | トニー・スコット |
評価 | 3.91 |
解説
カリフォルニア州ミラマー海軍航空基地。そこにF-14トムキャットを操る世界最高のパイロットたちを養成する訓練学校、通称“トップガン”がある。若きパイロットのマーヴェリックもパートナーのグースとともにこのトップガン入りを果たし、自信と野望を膨らませる。日々繰り返される厳しい訓練も、マーヴェリックはグースとの絶妙なコンビネーションで次々と課題をクリアしていく。しかしライバルのアイスマンは、彼の型破りな操縦を無謀と指摘する。その一方で、マーヴェリックは新任の女性教官チャーリーに心奪われていく。
監督 | マイク・ロール |
解説
[Netflix作品]アメリカ・シカゴのケーキ職人が、自分にそっくりなある国の公女と入れ替わる『スイッチング・プリンセス』シリーズの第3弾。公女をはじめ彼女にそっくりな二人の女性たちが協力して、盗まれたクリスマスの聖遺物を取り戻そうとする。監督を手掛けるのは、前2作を担当したマイク・ロール。『ハイスクール・ミュージカル』シリーズなどのヴァネッサ・ハジェンズが今回も一人三役を演じ、共演のニック・サガルとサム・パラディオも前作から続投するほか、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』などのレミー・ハイらが出演する。
あらすじ
モンテナロでクリスマスフェスティバルが開催され、バチカンから「平和の星」が贈られる。その平和の星が盗まれてしまい、公女マーガレット(ヴァネッサ・ハジェンズ)とステイシー(ヴァネッサ・ハジェンズ)は、いとこのフィオナ(ヴァネッサ・ハジェンズ)の力を借りる。フィオナたちはある男と組んで、盗まれた宝を取り返そうとする。
監督 | 首藤凜 |
評価 | 3.75 |
解説
芥川賞作家・綿矢りさの小説を原作にしたラブロマンス。校内の人気者で優等生の女子高校生、彼女が思いを寄せる同級生、その同級生と密かに交際する病身の女子生徒が織り成す恋模様を描く。メガホンを取るのは『21世紀の女の子』などの首藤凜。『樹海村』などの山田杏奈、ドラマ「DIVE!!」などの作間龍斗、『ソワレ』などの芋生悠のほか、山本浩司、板谷由夏、田中美佐子、萩原聖人らが出演する。
あらすじ
成績優秀で明朗快活な高校3年生の木村愛(山田杏奈)。校内きっての人気者である彼女は、地味で寡黙でありながらも聡明さと謎めいた雰囲気を漂わせる同級生の西村たとえ(作間龍斗)に惹(ひ)かれていた。そんな折、彼が大事そうに手紙を読んでいるのを見かけ、愛はそれを盗み読みしてしまう。手紙を差し出したのは、糖尿病の持病を抱える地味な新藤美雪(芋生悠)だった。二人が交際しているのを知って、言いようの感情に駆られる愛。彼女はたとえへの恋心を隠し、美雪に近づいていく。
監督 | 武内英樹 |
評価 | 4.02 |
解説
深田恭子と瀬戸康史が演じる、泥棒一家の娘と警察一家の息子の恋をコミカルに描いたドラマシリーズの劇場版。二人の新婚旅行先で、泥棒一家“Lの一族”が最後のお宝奪取に臨む。共演は橋本環奈や小沢真珠、栗原類、どんぐり、渡部篤郎らドラマ版の出演者をはじめ、劇場版キャストとして観月ありさ、岡田義徳が共演する。監督を『テルマエ・ロマエ』『翔んで埼玉』シリーズなどの武内英樹が務める。
あらすじ
泥棒一家“Lの一族”の娘として生まれた三雲華(深田恭子)と警察一家の息子の桜庭和馬(瀬戸康史)は、娘の杏(小畑乃々)を連れて遅めの新婚旅行でディーベンブルク王国を訪れる。しかし、そこで最後の大仕事のためにやって来た華の家族と遭遇。あきれる華だったが、杏が誘拐され、犯人からあるお宝を交換条件として要求される。さらに、死んだとされていた一族のひとり、三雲玲(観月ありさ)が現れる。
監督 | 瀬々敬久 |
評価 | 3.66 |
解説
中島みゆきの楽曲「糸」を基に描くラブストーリー。『アルキメデスの大戦』などの菅田将暉と『さよならくちびる』などの小松菜奈が主演し、日本やシンガポールを舞台に、平成元年生まれの男女の18年を映し出す。『ヘヴンズ ストーリー』などの瀬々敬久が監督を務める。『スマホを落としただけなのに』などの平野隆が原案と企画プロデュース、『永遠の0』などの林民夫が脚本を担当した。
あらすじ
北海道で暮らす13歳の高橋漣(菅田将暉)と園田葵(小松菜奈)は、互いに初めての恋に落ちるが、ある日突然葵の行方がわからなくなる。彼女が養父の虐待から逃れるために町を出たことを知った漣は、夢中で葵を捜し出し駆け落ちしようとする。だがすぐに警察に保護され、葵は母親と一緒に北海道から出て行ってしまう。それから8年、漣は地元のチーズ工房に勤務していた。
監督 | ふくだももこ |
評価 | 3.43 |
解説
『渋谷区円山町』の原作などで知られる漫画家・おかざき真里が、作家・雨宮まみのエッセイを原案に女性たちが抱える不安や希望を描いたコミックを映画化。30代独身の人気作家が、自分らしい幸せの形を模索する。監督を『おいしい家族』『君が世界のはじまり』などのふくだももこ、脚本を『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』などの坪田文が担当。ヒロインを『マスカレード・ナイト』などの田中みな実が演じる。
あらすじ
10年前に発表したエッセイが思わぬヒットとなり、一躍有名作家なった本田まみ(田中みな実)。生きづらい女性たちの本音を代弁し読者の支持を集めてきたが、近ごろはヒット作を書けず作家活動は迷走気味だった。さらに36歳で独身であることを周囲から「一人でかわいそう」と心配され、結婚を前提に交際している年下の恋人とはすれ違いも多い。キャリアや今の暮らしに不満はないものの、まみは「ずっと独身でいるつもり?」という周囲からの「雑音」に揺れ動く。
監督 | イ・ジェハン |
評価 | 3.06 |
解説
『四月の雪』でペ・ヨンジュンと共演したソン・イェジンと、『MUSA 武士』のチョン・ウソンによる不朽の愛の名作。韓国映画界におけるラブストーリーの女王と美形カリスマ俳優が、不治の病と闘いながら、きずなを深めていくカップルを熱演する。“若年性アルツハイマー”という重いテーマを扱いつつも、最後まで希望を捨てないエンディングは秀逸。今までの韓国映画とは一線を画す、美男美女による格調高い恋愛ドラマ。
あらすじ
お嬢様育ちのスジン(ソン・イェジン)と、愛に懐疑的なチョルス(チョン・ウソン)は恋に落ち結婚する。2人はさまざまな困難を乗り越えて一層愛を深めていくが、幸せな日々はそう長くは続かなかった。
映画レポート
愛の永続性を信じたい。なのに運命は試練を与え……純愛映画の多くはそんなプロットに集約される。永作博美主演の連ドラ・リメイクである本作も、ヒロインはアルツハイマーによって愛する人との想い出を蝕ばれ、まさに方程式に忠実だ。
ところがこのファンタジーは、意外な奥行きを獲得していく。クラシカルなお嬢様とワイルドな男。買ったはずの「コーク」を彼女がコンビニに置き忘れたことで、対照的な2人は出会った。冒頭からラテン音楽が饒舌に流れ、無国籍な雰囲気が醸成される。男は大工上がりの建築家。韓国の街並みをアメリカナイズしていくというイコンである。マッチョな彼と一体化するにつれ、ヒロインの健忘は加速度を増す。滅びゆく前時代の精神が、近代化の中で揺らぐ――「殺人の追憶」や「4人の食卓」でも描かれた急激な変化の中で生じる時代の歪みや不安が、若き夫婦の関係に象徴されているように見えてくる。
記憶=アイデンティティーを失っていく妻と、何とか記憶を繋ぎとめておきたいと願う夫に感情移入してしまうのは、韓流や純愛という枠組みを超え、古き良き価値観に健忘症になるプロセスを歩んできた昭和のDNAがうごめくからなのかもしれない。(清水節)
監督 | 柿本ケンサク |
評価 | 3.54 |
解説
「三日間の幸福」などで若者を中心に支持を集める作家・三秋縋の恋愛小説を映画化。潔癖症に苦しむ孤独な青年と視線恐怖症で不登校の女子高生が出会い、生きづらさを抱えながらも儚く繊細な恋を育んでいく姿を描く。主演は、『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』などの林遣都と、『渇き。』などの小松菜奈。『LIGHT UP NIPPON ~日本を照らした、奇跡の花火~』などの柿本ケンサクがメガホンを取り、脚本を『トワイライト ささらさや』などの山室有紀子が手掛けた。
あらすじ
ひどい潔癖症により人と接することができず孤独な青年・高坂賢吾(林遣都)は、視線恐怖症で不登校の女子高生・佐薙ひじり(小松菜奈)の面倒を見ることになる。佐薙の露悪的な態度に困惑する高坂だったが、それが弱さを隠すためのものだと気付き親近感を抱く。クリスマスに手をつないで歩くことを目標に「リハビリ」を始めた二人は次第に惹かれ合い、初めての恋に落ちるが......。
監督 | 犬童一心 |
評価 | 3.94 |
解説
芥川賞作家・田辺聖子の同名短編小説を、「金髪の草原」の犬童一心監督が妻夫木聡と池脇千鶴主演で映画化したピュアで切ないラブ・ストーリー。ふとしたキッカケで恋に落ちたごく普通の大学生と不思議な雰囲気を持つ脚の不自由な少女、そんな2人の恋の行方を大阪を舞台にキメ細やかな心理描写と美しい映像で綴る。大学生の恒夫は、ある朝、近所で噂になっている老婆が押す乳母車と遭遇する。そして、彼が乳母車の中を覗くと、そこには包丁を持った少女がいた。脚が不自由でまったく歩けない彼女は、老婆に乳母車を押してもらい好きな散歩をしていたのだ。これがきっかけで彼女と交流を始めた恒夫は、彼女の不思議な魅力に次第に惹かれていくのだが…。
監督 | 土井裕泰 |
評価 | 3.92 |
解説
『コーヒーが冷めないうちに』などの有村架純と『帝一の國』などの菅田将暉を主演に迎えた恋愛物語。東京・井の頭線の明大前駅で終電を逃してたまたま出会った男女と、全ての事柄が絡み合いながらリンクしていく様子を描写する。有村が主演を務めた『映画 ビリギャル』などの土井裕泰が監督を務め、ドラマ「東京ラブストーリー」「カルテット」などの脚本家・坂元裕二が脚本を書き下ろした。
あらすじ
ある晩、終電に乗り遅れた大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、東京・京王線の明大前駅で偶然出会う。お互いに映画や音楽の趣味がよく似ていたこともあり、瞬く間に恋に落ちた二人は大学卒業後、フリーターとして働きながら同居を始める。ずっと一緒にいたいと願う麦と絹は、今の生活を維持することを目標に、就職活動を続ける。
映画レポート
1980年代後半以降、エポックメイキングなテレビドラマを数多く手がけてきた名脚本家・坂元裕二が、舞台を映画に移し、純正ラブストーリーをオリジナルで書き下ろした。「花束みたいな恋をした」は、鑑賞後に五感すべてに負荷のかかる意欲作といえる。
坂元の名を一躍知らしめたのは、91年に社会現象となった「東京ラブストーリー」だが、これはもう別の時代の作品である。今作は2015~20年、山根麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)という、どこにでもいる現代の大学生の21歳から26歳までを描いている。
東京・井の頭線の明大前駅で終電を逃した麦と絹が偶然出会い、恋に落ち、子どもでも大人でもない5年間を迷いながら歩んでいくふたりの姿は、どこまでもリアルだ。そのリアリティを助長するのが、坂元作品の特徴ともいえる固有名詞の数々、そして菅田と有村の真似ができないバランス感覚といえるのではないだろうか。
それにしても、今まで以上に固有名詞に溢れている。ふたりの距離を一気に縮める重要な役割を果たした押井守にいたっては本人役で出演しているし、その後も天竺鼠、ミイラ展、ジャックパーセル、今村夏子、ゴールデンカムイ、宝石の国など、書き出したらきりがない。
今作の脚本を読んでから本編を改めて鑑賞してみて感じるのは、坂元の脚本は役者が声に出してセリフとして発した瞬間、観る者に一番届くのだと実感させられる。固有名詞の波状攻撃を浴び、気持ち良くのみ込まれ身を任せていると、不意に忘却の彼方へ追いやっていた何十年も前の記憶がよみがえり、心が震えている…という体験をすることになる。
そればかりではない。坂元の著書「往復書簡 初恋と不倫」にある“村上龍”ネタは今作にも登場するし、坂元が個人的に大好きなんだろうと容易に想像がつくファミレス(今回はジョナサン)は、今作でも重要な場所として登場する。ロケーションのひとつひとつをとっても、何ひとつ“違和感”が紛れ込んでいないため、観る者にとっていつしか麦と絹は「わたし」であり「あなた」の物語となっていく。
そして巧妙に、どこまでも巧妙に、伏線が張り巡らされている。「トイレットペーパー」と「じゃんけんのルール」。このふたつの持つ意味合いが終盤、全く変わってくるのには驚きを禁じ得ない。(大塚史貴)
監督 | ミック・ジャクソン |
評価 | 3.60 |
解説
脅迫状が次々と送り付けられる傲慢な女性シンガーを、敏腕ボディガードが警護をすることになるが、険悪な関係から次第に愛情が芽生え始める。しかし魔の手は次第に過激さを増し……。日本では異常なほど人気の高いK・コスナーと、この映画が初出演となったW・ヒューストンのサスペンス・タッチのラブストーリー。
監督 | トム・ヴォーン |
評価 | 3.63 |
解説
ラスベガスで電撃婚をしてしまった男女が、カジノで稼いだ大金をめぐり、大バトルを繰り広げるロマンチック・コメディー。主演は『ホリデイ』のキャメロン・ディアスと『守護神』のアシュトン・カッチャー。新鋭監督トム・ヴォーンが監督を務めている。共演は『ヘアスプレー』のクイーン・ラティファ。ラブコメディーに定評のあるキャメロンとアシュトンの2大スターが、どのような掛け合いを見せてくれるかに期待だ。
あらすじ
フィアンセにフラれたキャリアウーマン、ジョイは(キャメロン・ディアス)は親友とともにラスベガスへ。そこで意気投合したジャック(アシュトン・カッチャー)と、いつの間にか結婚してしまう。正気に戻った2人は結婚を無効にしようとするが、そんな中カジノで300万ドルを稼ぎ、互いに大金の所有権を主張することに……。
監督 | ブレット・ラトナー |
評価 | 4.10 |
解説
優雅な独身生活を謳歌していたビジネスマンが昔の恋人との“もうひとつの人生”を体験することで本当の幸せに目覚める姿を描いた大人のファンタジー。成功を夢見て恋人ケイトと別れロンドンへ旅立ったジャック。13年後のいま、ジャックは大手金融会社の社長として、優雅な独身生活を満喫していた。クリスマス・イブ、昔の恋人ケイトからの電話があったが、かけ直すことはしなかった。その夜、自宅で眠りについたジャックだが、目覚めると、ケイトと我が子2人に囲まれた家庭人ジャックになっていた……。
監督 | 荒井晴彦 |
評価 | 3.17 |
解説
直木賞作家の白石一文の小説を原作にした衝撃作。再会した男女が、次第に愛の嵐にのみ込まれていく。『大鹿村騒動記』などの脚本家で、『この国の空』では監督を務めた荒井晴彦がメガホンを取る。『素敵なダイナマイトスキャンダル』などの柄本佑と『彼女の人生は間違いじゃない』などの瀧内公美が主人公の男女を演じる。
あらすじ
東日本大震災から7年目の夏、離婚し、再就職先も倒産してしまった永原賢治(柄本佑)は、かつて恋人だった佐藤直子(瀧内公美)の結婚式に出るため郷里の秋田に帰省する。久々に再会した賢治と直子は、ふとしたきっかけでかつてのようにお互いを求め合う。
映画レポート
荒井晴彦は、過去にとらわれた男と女の移ろいやすい関係を濃密なティシズムを介して描き出す脚本家だが、「身も心も」(97)「この国の空」(15)に続いて脚本・監督をつとめた「火口のふたり」は、その自家薬籠中のモチーフがもっとも大胆かつシンプルに抽出された秀作といってよい。
十日後に結婚する直子(瀧内公美)は故郷の秋田に帰省した昔の恋人・賢治(柄本佑)と久々に再会し、つかの間、激しいセックスに溺れる。
冒頭から聴こえてくる、ヒロインの内心の欲望の反響のような、伊東ゆかりの歌う「早く抱いて」(作詞・作曲:下田逸郎)の甘やかな歌声に、まず魅了される。偶然を装いつつ、ふたりの官能の日々をピンナップした一冊のアルバムを見せること、危うさを察知して部屋を出ていきかける賢治に対し、真剣な眼差しで、ソファを何度もバンバン叩く異様に長いショット、そして「今夜、あの頃に戻ってみない?」という抗しがたい誘惑的なフレーズ。
映画は、終始、直子の周到な企みによって深く静かに進行する。戯れだけの確信犯なのか、無意識による復讐なのか。〝不在〟の婚約者が戻るまでの五日間という限定された時間のなかで、ふたりはむさぼりあうように激しい性愛に耽る。ただし、そこには陰湿さや粘着的なイメージは微塵もない。まさに若いふたりの〝身体の言い分〟を全肯定する、すがすがしいまでの淫らさが際立って印象的なのだ。柄本佑は困惑と野放図さが同居するキャラクターを見事に演じているが、瀧内公美のしなるような肢体と繊細な演技が圧倒的にすばらしい。
ラストに至って、いささか唐突に終末論的、黙示録的ビジョンが提示されるものの、全篇を通じて〝死〟の気配は遍在していたように思う。とりわけ、900年続く〝亡者踊り〟と称される西馬音内盆踊りの行列の間を、ふたりが走り抜けるシーンで一瞬、画面がスローモーションとなり、さらにストップモーションとなる場面はこの上なく美しい。まるで、生と死の淵を彷徨する、このふたりの妖しい道行のようであった。(高崎俊夫)
監督 | 石井隆 |
評価 | 3.05 |
解説
『GONIN』『花と蛇』シリーズなどの鬼才・石井隆が、1992年に発表した短編コミックを基にして放つチック・ロマンス。孤独と不幸を背負った青年が、心を持った美少女フィギュアとの恋を通して希望を見いだす姿を描き出す。多くの作品で存在感を示している柄本佑が、絶望のふちに立たされた主人公の青年を好演。そんな彼に夢をもたらす美少女フィギュアにはグラビアアイドルの佐々木心音がふんし、ヘアヌードも披露する。幻惑的なビジュアルも、はかない物語を彩っている。
あらすじ
リストラされてヤケ酒をあおり、その果てにチンピラとトラブルを起こした孤独な青年(柄本佑)。おびただしい数のマネキン人形が廃棄されている歌舞伎町の廃虚ビルへと逃げ込んだ彼は、そこで人間の少女のような肉体をしたセーラー服姿のフィギュア(佐々木心音)を見つける。胸をもみしだき、下着を脱がせるなどして、フィギュアと甘い時間を過ごしていたが、ビル内で犯罪行為を働くヤクザたちの姿を目撃。彼らに追い詰められ、青年は死を覚悟するが、突如としてフィギュアが動き出してヤクザを次々と蹴散らしていく。
監督 | 蜷川幸雄 |
評価 | 2.78 |
解説
自らの舌にピアスを開け、背中に入れ墨を彫り肉体改造におぼれていくヒロインの愛と絶望の日々描く衝撃ドラマ。弱冠20歳で芥川賞を受賞した金原ひとみの同名原作を世界的演出家の蜷川幸雄が監督として完全映画化。ヒロインを『紀子の食卓』の吉高由里子が熱演。彼女を愛する男たちを高良健吾、ARATAが好演するほか、小栗旬、唐沢寿明、藤原竜也ら蜷川組が顔をそろえる。大胆な場や壮絶なバイオレンス描写が物議を醸す問題作。
あらすじ
蛇のように割れた舌を持つ男アマ(高良健吾)と出会った19歳のルイ(吉高由里子)は、自分とはまったく違う世界に住む彼と付き合いつつ、アマの紹介で知り合った彫り師シバ(ARATA)とも関係を持ち始める。ルイはピアスを開け、背中に入れ墨を彫り身体改造の痛みと快楽に身を委ねる日々を送るが、どこか満たされぬ思いを抱えていた。
監督 | 山戸結希 |
評価 | 2.39 |
解説
映画化もされた「平凡ポンチ」「ピース オブ ケイク」などのジョージ朝倉の人気コミックを映画化した型破りなラブストーリー。東京から田舎町に引っ越して来た美少女と、個性的な少年の出会いを軸に、10代特有のヒリヒリとした青春の日々を描写する。主演は、小松菜奈と菅田将暉。監督を務めるのは原作の大ファンだという『5つ数えれば君の夢』などの山戸結希。原作が持つ独特の世界観をスクリーンに焼き付けた物語に魅了される。
あらすじ
東京で雑誌モデルを務める望月夏芽(小松菜奈)は、急に父親の郷里である浮雲町に転居することになる。彼女は都会とはかけ離れた田舎での地味な生活に幻滅してしまうが、長谷川航一朗(菅田将暉)と出会ったことで人生が一変する。彼は田舎町で有名な神主の一族の出身で、夏芽はひねくれ者で一風変わった航一朗に強く惹(ひ)き付けられる。
監督 | 三木孝浩 |
評価 | 4.05 |
解説
「学園とセカイと楽園(がくえん)」「君にさよならを言わない」などで知られる七月隆文の小説を基にした青春ラブロマンス。一目ぼれした女性と恋人同士になった美大生が、彼女の抱えている思いも寄らぬ秘密と向き合う姿を追い掛ける。メガホンを取るのは、『ホットロード』『アオハライド』などの三木孝浩。『ストロボ・エッジ』などの福士蒼汰、『近キョリ恋愛』などの小松菜奈が、主人公のカップルを好演する。爽やかで切ない物語や、舞台となる京都の美しい風景も見もの。
あらすじ
京都の美大に在籍する20歳の南山高寿(福士蒼汰)。ある日、彼は電車で大学に行こうとしたところ福寿愛美(小松菜奈)という女性に出会い、瞬く間に心を奪われてしまう。高寿は愛美に声を掛けるが、高寿のある一言を聞いた途端に愛美は涙を流す。その理由を尋ねることができずにいた高寿だったが、その後二人は付き合うことになる。周囲からもうらやましがられるほど順調に交際が進み、幸せな日々がいつまでも続くと考えている高寿。だが、愛美から思いも寄らなかった秘密を打ち明けられる。
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