『ジャンクヘッド』は堀貴秀監督が新海誠監督にインスピレーションを受けて、独学&ほとんど一人で製作した映画です。そのため、監督の頭の中を覗いているような不思議な魅力があります。特に中盤のシーンは「どうやって思いついたんだろう」といった気持ちになる仕上がり。本作は海外で高い評価を得ており、ストーリーだけでなく撮影の仕方や編集といった想像力の豊かさに魅了されたユーザーが多いようです。そこで本記事では『ジャンクヘッド』の基本情報から魅力まで一気に紹介していきます。『ジャンクヘッド』気になっていたけど怖い作品なの?と思っている方はぜひ本記事をお読みください。
監督 |
堀貴秀 |
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脚本 |
堀貴秀 |
公開 |
2021年3月26日 |
上演時間 |
99分 |
『ジャンクヘッド』は、堀貴秀監督がほぼ1人で7年かけて製作した長編ストップモーションアニメ映画。約4年かけて製作された『ジャンクヘッド1』を修正&追加撮影し、本作が完成しました。
もはや人が住めないほど汚染された近未来。そこで人類は地下開発を目指すべく、労働力として人工生命体マリガンを作り出します。しかし、自我に芽生えたマリガンによって、人類は地下を奪われることに。それから1600年経ち、人類は遺伝子操作によって永遠の命を手に入れましたが、代償として生殖能力を失ってしまいます。
そんな人類に襲い掛かったのが新種のウイルス。ウイルスによって30%の人口が失われ絶滅の危機に陥った人類は、独自に進化したマリガンの調査を開始します。政府が地下調査隊を募集すると、生徒が激減したダンス講師(主人公)が名乗りを上げました。
地下へと潜入した主人公は“死”と隣り合わせになったことで命を実感。マリガン達と協力して人類再生の道を探ることになりますが、くせ者の生き物たちが次々と襲ってきて…
『ジャンクヘッド』は堀貴秀監督が独学で7年かけて製作した作品です。ほぼ一人で撮影しているため、監督のみならず、原案、キャラクターデザイン、編集、撮影、照明、音楽も手掛けました。本作を作ろうと思ったきっかけは、ほとんど一人で『ほしのこえ』を製作した新海誠監督の存在が大きかったそう。
『ジャンクヘッド』は数々の賞も受賞しています。例えば、北米最大をうたっている「ファンタジア国際映画祭/最優秀長編アニメーション賞」こちらはあらゆるジャンルが集まる映画祭で最優秀賞を受賞したことを意味しています。「オルデンブルク国際映画祭/入選」はドイツで行われる映画祭で、独創的な作品だと認められた証です。
そして「ファンタスティック映画祭/新人監督賞」はアメリカ最大級のジャンル映画祭で受賞したことを意味しています。エッジの効いた作品を多く上映しており、ティム・バートン監督などもゲスト参加する大規模な映画祭です。
『ジャンクヘッド』は製作当初から3部作で構想していた作品とのこと。そのため、次回作の絵コンテまで既に完成済みだそうです。しかし、製作にはお金がかかるため、製作開始時期は未定。監督は「第1部となる本作がヒットすればすぐにでも作り出せる」とコメントしています!
『ジャンクヘッド』は独特の世界観とストーリーによって、多くの人を魅了する作品となっています。特に職業の経験を活かしたセットや人形は唯一無二の存在。ここからは、そんな『ジャンクヘッド』の魅力を3つにまとめたのでご覧ください。
元々美術家志向で彫刻、操り人形、絵などを作っていた堀貴秀監督。キャラクターの素材にはプラスチックとフォームラテックスを使用するなど、海外でよく使われている技法を独学で学んできました。そういった目に見えない部分から独特の世界観が作り出されています。また、内装をやっていた経験を活かして大規模なセットを作成するといった、職業の経験もしっかり活かされているのがポイントです。
一応全年齢対象になっている本作品ですが、中盤で流れるグロい食事シーンは耐性がない人だと目を背けたくなるかもしれません。そんなシーンを作成した監督は、ある意味天才といっても過言ではありませんね。とはいえ、小さい子供にはあまりおすすめできない作品。人形なので多少気持ち悪さが軽減されているものの、最低でも字幕が読めるレベルの年齢から楽しめる作品かもしれません。
本作では主人公の成長をボディの変化で表しています。主人公はサイボーグ(機械)なので成長しませんが、体を乗り換えることで成長を見せようと思ったそうです。そのためか、監督自身も主人公が一番思い入れのあるキャラクターだとコメントしていました。
「ポッコリーノ〜ペッコリーナ〜」とエンディングが流れても、しばらく作品の世界観から抜け出せませんでした。一体どれくらいの労力が費やされたのか想像もできないストップモーションアニメ。鑑賞中何度も「グロい…」と顔をしかめたはずなのに、なぜかもう一度観たくなる。Junk Headはそんな不思議な中毒性を持ったアニメ映画でした。
カメラワークも演出も秀逸。キャラクターたちのセリフは最小限で言葉も何語でもない架空の言語、さらに全員無表情なのに、それぞれの感情がわかるから不思議。ポン太(神様)の目線だけでなく、さまざまな生物の視点に立って自由に飛び回るので、まるでアトラクションに乗っているかのような臨場感が楽しめました。ちなみにエンドロールでは堀監督が一人で作業している様子が収録されています。たった一人で7年もかけて…とにかくスゴすぎです。
『ジャンクヘッド』は海外で高い評価を受けています。既に視聴した海外ユーザーのコメントを見てみると「グロテスクだけど美しさもあって魅力的な映画」「アニメーションの歴史になるかもしれない職人技」「キャラクターデザインだけでなく、編集、フレーミングなど映画を作りこむ要素全てをもって想像力に富んだ作品」といった肯定的なレビューがたくさん見られました。また、作品だけでなく、本作を作るために注ぎ込まれた監督の熱意と才能は大きいものだといった、監督に対する評価も高くなっています。
実は堀貴秀監督がTwitterで投稿したコメントが一時炎上してしまいました。監督は公開最初の週に女性観客が思ったより多かったのに対し、「週末興行情報でびっくりしたのは観客の男女比率が6:4だって事!!え?奇女?珍女?でもそんな女性とは話が合いそう。好きな映画が「JUNK HEAD」という男女は間違いなく幸せになれるでしょう」とツイート。この「奇女?珍女?」の部分が差別的だとして炎上してしまったようです。
しかし、監督自身は誉め言葉として使っていたようで、後のツイートでも「男性とは感性が違う先入観がありました。誉め言葉のつもりで書き込んでしまいました。申し訳ありませんでした」と謝罪しています。これに対し配偶者からも「普段から口が悪いからそんなことになる」と怒られたとコメントしていました。
『ジャンクヘッド』は、ほとんど一人で作成したとは思えないクオリティと壮大なテーマが魅力です。一部グロテスクなシーンもありますが、人形なので大人の方なら十分見れる作品だと思います。これから『ジャンクヘッド』を見ようと思っている方は、ストーリーだけでなく、作りこまれたセットや人形に目を向けてみると面白いかもしれませんね。
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