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監督 | ヴァディム・シメリョフ |
評価 | 未評価 |
解説
第2次世界大戦でナチス・ドイツ軍によるモスクワ陥落を阻止したソ連軍士官候補生たちの戦いを、当時の兵器などを使って壮大なスケールで描いた戦争アクション。1941年、首都モスクワに迫るナチス・ドイツ軍に対し、戦場を初めて体験する若者たち約3,500名が立ち向かう。監督を務めるのは『ミッション・イン・モスクワ』などのヴァディム・シメリョフ。アルチョム・グビン、リュボフ・コンスタンティノワ、イゴール・ユディン、アレクセイ・バルドゥコフなどが出演する。
あらすじ
1941年10月、ソ連の首都モスクワ近郊のイリンスコエ防衛ライン。ナチス・ドイツの大軍がモスクワを目指して進撃する中、兵力不足に陥っていたソ連軍は、学生兵や看護師などおよそ3,500名の若者たちを前線に送り込む。士官候補生のラヴロフらは必死に戦うが、仲間たちが次々にナチス・ドイツ軍の猛攻撃の犠牲になっていく。
監督 | マシュー・マイケル・カーナハン |
評価 | 3.00 |
解説
『アベンジャーズ』シリーズなどのアンソニー、ジョー・ルッソ兄弟が製作を務めたアクション。イラクを舞台に、SWAT部隊の隊員となった警察官がイスラム過激派組織ISに立ち向かう。メガホンを取るのは『ワールド・ウォー Z』などの脚本を手掛けてきたマシュー・マイケル・カーナハン。スハイル・ダバック、アダム・ベッサ、イシャク・エリアスのほか、クタイバ・アブデル=ハック、アフマド・ガーネムらが出演する。
あらすじ
イラク第2の都市、モスル。21歳の新人警察官カーワ(アダム・ベッサ)は、イスラム過激派組織ISに襲われたところをジャーセム少佐(スハイル・ダバック)が率いるSWAT部隊に救われる。彼らは十数名の元警察官で編成された特殊部隊で、本部からの命令を聞かずに独自の行動を展開していた。カーワがISに身内を殺されたと聞いたジャーセム少佐は、彼を隊員として迎え入れる。激しい戦闘を重ねながら部隊はISの要塞に乗り込むが、部隊にはカーワの知らない任務があった。
監督 | クリストファー・ノーラン |
評価 | 3.94 |
解説
第2次世界大戦で敢行された兵士救出作戦を題材にした作品。ドイツ軍によってフランス北端の町に追い詰められた連合軍兵士たちの運命と、救出に挑んだ者たちの活躍を描く。監督は『インセプション』などのクリストファー・ノーラン。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのトム・ハーディ、『プルートで朝食を』などのキリアン・マーフィ、『ヘンリー五世』などのケネス・ブラナーらが出演。圧倒的なスケールで活写される戦闘シーンや、極限状況下に置かれた者たちのドラマに引き込まれる。
あらすじ
1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。
映画レポート
「戦史」というからには、結果はわかっている。ダンケルク撤退戦もそのひとつだ。第二次大戦の初期、フランス北端の浜辺に追いつめられた連合軍兵士の大脱出劇。歴史に詳しくない人でも、結果は知っているはずだ。
では、クリストファー・ノーランはこの撤退劇をどう撮ったのか。結果からの逆算は、だれしも思いつく。ただ、よくよく考えなければならない。そのなかで、なにを見せるか。あるいは、なにを省くか。
戦史を知らないと、疑問はいくつも生じる。ドイツ軍機甲師団は、現在どこにいるのか。ドイツ軍の空爆はなぜ散発的なのか。連合軍の艦船はなぜ救援に来ないのか。ダンケルクの港はなぜ使えなかったのか。
いま振り返れば答はすべて明らかなのだが、当時、浜辺に逃げ込んだ40万の兵士たちは盲目同然だったはずだ。自分たちは、なにをしているのか。どうすれば苦境を逃れられるのか。五里霧中で、単独行は不可能だ。
ノーランは、観客も同じ立場に投げ込んだ。説明は抜きだ。ドイツ軍の電撃戦やチャーチルの決断は、この映画には出てこない。兵士も観客も、先は読めない。背後から潰滅的な危機が迫ってくるのはたしかなのに、戦況は断片的に知らされるだけだ。そんなとき、人間と空間はどう変容するか。泣いたり喚いたりしても無駄だ。暴発も感傷も苦悩も作り物になる。不要だ。索漠とした空と海に挟まれ、恐怖と絶望に押しつぶされそうになった若い兵士たちは、どんな行動に出るのか。そして、彼らが体感した空間とはどんなものなのか。
ただノーランは、かすかな希望を描くことも忘れなかった。これは「ダンケルク」の急所だ。数少ない戦闘機と、小さな民間船。彼らも空間を変える。戦闘機は雲の厚い上空から兵士たちを守り、小舟は潮の流れが読みづらい海を渡って兵士たちの救助に向かう。静かだが、信頼できる勇気だ。そんな勇気を、ノーランは「スケールの大きな物語作家」の眼から離れて描き出す。死と隣り合った灰色の空間で、マイナーポエットの眼がこまやかに働いている。(芝山幹郎)
監督 | アレクセイ・シドロフ |
評価 | 4.24 |
解説
『戦火のナージャ』などのニキータ・ミハルコフ監督が製作を務めた戦車アクション。ナチスドイツの捕虜収容所を舞台に、ソ連の捕虜兵たちがナチスに抵抗する姿を描く。『アトラクション 制圧』で共演したアレクサンドル・ペトロフとイリーナ・スタルシェンバウムらが出演。本物のソ連製戦車T-34を使用し、役者が自ら操縦した。
あらすじ
第2次世界大戦中、ソ連の新米士官イヴシュキンは初出撃で健闘したが敗れ、ナチスドイツの捕虜になってしまう。彼が戦車の指揮官であることがわかると、ナチスの戦車戦演習のためにソ連軍の戦車T-34を操縦するよう命じられる。戦車の整備と演習の準備期間をもらったイヴシュキンは、捕虜仲間たちと隊を組む。
映画レポート
戦車から放たれた砲弾が車両をかすめる時の金属音を聞いたことがあるだろうか。「キーーーン」という耳をつんざく金属音が狭い戦車内にこだまし、乗組員の顔が苦痛にゆがみ、観ているこちらも思わず脳震盪を起こしそうになる。戦車を題材にした作品は数多いが、こういう描写にはなかなかお目にかかれない。
本作は、そんな目を見張る描写が満載だ。砲弾が着弾する瞬間をスローモーションと巧みなVFXで捉え、砲弾の視線でカメラが相手戦車に向かって飛び込んでいく。さらには、戦車が片輪走行を始めたと思ったら、美しく「白鳥の湖」を舞い踊り、ピカピカのドイツの高級車を躊躇なく踏み潰すなど、爽快感と驚きたっぷりのアクションをこれでもかと見せつける。夜の市街戦では、民家を存分にぶっ壊してながらの陣取り合戦に、至近距離からの砲弾の撃ち合いと、沸き立つシーンの連続だ。しかも「T-34」はなかなかにすばしっこいので、重量感だけでなくスピード感あるアクションも多い。
物語は、第二次大戦の独ソ戦でドイツ軍が演習目的で捕虜を生きた標的としていた史実から着想しているが、その事実を掘り下げる方向には発展させず、捕虜となったソ連兵が演習用の「T-34」に乗り込み決死の脱出劇を図るという筋書きとなっている。まるで「大脱走」の戦車版だが、戦車アクションの迫力に加えて、緊迫の脱出劇と自由を求めて諦めない男たちの不屈の友情、そしてロマンスが作品のスパイスとして効いている。
本作に登場するソ連の戦車「T-34」は全て本物。狭い車内に小型カメラを取り付け撮影し、本物を役者自ら操縦しているそうだ。現代映画の技術ならいくらでも偽物を作り出せるが、本物の持つ戦車には、その無骨なボディに哀愁と気品、そして無念の残滓を感じてしまう。「兵どもが夢の跡」というやつだろうか。迫力と娯楽重視の戦争映画なのだが、本作には散っていった人々に想いを馳せる瞬間も確かにあるのだ。(杉本穂高)
監督 | クリント・イーストウッド |
評価 | 4.01 |
解説
アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝を実写化したドラマ。アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のスナイパーであった彼が、イラク戦争で数々の戦果を挙げながらも心に傷を負っていくさまを見つめる。メガホンを取るのは、『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッド。『世界にひとつのプレイブック』などのブラッドリー・クーパーが主演を務め、プロデューサーとしても名を連ねている。戦争とは何かを問うテーマに加え、壮絶な戦闘描写も見もの。
あらすじ
イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。
映画レポート
スクリーンから伝わる戦場のざらついた風、焦げついた臭いに極限までなぶられる。目を背けたくなる決断の数々が徐々に感情を麻痺させていく???。前作「ジャージー・ボーイズ」の爽快な後味がどれほど懐かしく、遠い昔に思えることか。御歳84になるクリント・イーストウッドが新たに紡ぐのは、イラク戦争の過酷な現実を生きたネイビー・シールズ隊員、クリス・カイルの物語だ。
160人を射殺した凄腕の狙撃手として、味方からは「伝説」と賞賛され、敵からは「悪魔」と恐れられた彼。その知られざる人物像をイーストウッドが丹念に描き出し、また自ら映画化権を獲得したブラッドリー・クーパーが、精神的にも肉体的にも己を限界まで追い込むほどの気迫でこの役を生き抜いている。
だが、本作がクリスの活躍を讃えた英雄物語だと思ったら大間違いだ。イーストウッドはその人間の一面のみをクローズアップする手法は採らない。光を描けば影もまた克明さを増す。壮絶な戦況で命のやり取りを交わすたび、クリスの魂には楔(くさび)が打ち込まれていく。そして、愛する家族のもとにようやく帰れたかと思うと、今度は抑えていたものが吹き出し、精神的な爪痕が彼を蝕んでいく。この一連の出口の無さにも、しっかりと主眼が向けられるのだ。
興味深いのは、本作が70年代から現代までに及ぶ主人公の半生を儀式のごとくつぶさに描き出していることだ。そうすることでイラク戦争という悪夢を単なる「点」ではなく、一人の人間の生き様の中でじっくりと炙(あぶ)り出すことが可能となる。クリスが幼少期に培った「他者を守る」という意識。その信念を強く貫いたがゆえに、やがて重い犠牲を払うことになる皮肉。こうした流れにはイーストウッドが過去に描いてきた複雑な主人公たちと通底するものを感じずにいられない。
本作の結末には正直言って激しく動揺させられた。戦争の傷跡はあまりに深い。はたしてアメリカは事態とどう向き合っていくのだろうか。この映画に叙情的なシンフォニーは存在しない。無音で流れゆくエンド・クレジットは我々に、今この瞬間、自分自身の頭で思考し続けることを求めている。(牛津厚信)
監督 | スティーヴン・ダルドリー |
評価 | 3.83 |
解説
幼いころに恋に落ち、数年後に劇的な再会を果たした男女が、本の朗読を通じて愛を確かめ合うラブストーリー。ベルンハルト・シュリンクのベストセラー「朗読者」を原案に、『めぐりあう時間たち』の名匠スティーヴン・ダルドリーが映像化。戦時中の罪に問われ、無期懲役となったヒロインを『タイタニック』のケイト・ウィンスレット、彼女に献身的な愛をささげる男をレイフ・ファインズが好演。物語の朗読を吹き込んだテープに託された無償の愛に打ち震える。
あらすじ
1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳も年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていった。ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消し、数年後、法学専攻の大学生になったマイケル(デヴィッド・クロス)は、無期懲役の判決を受けるハンナと法廷で再会する。
映画レポート
15歳の少年と21歳年上の女性の情事。目覚めを描く青春映画のごとき発端だが、ナレーターとして時折顔を出すレイフ・ファインズの沈鬱な表情が、この物語の行く末を暗示しているようで、胸がざわつく。その不安が的中。輝く夏の恋が終わりを告げてから8年、大学生になったマイケルは、かつて熱愛したハンナが、ナチス戦犯を裁く法廷の被告席にいるのを発見するのだ。
スティーブン・ダルドリー監督と脚本のデビッド・ヘアは、「めぐりあう時間たち」と同じように、物語の時間軸を寸断し、ハンナとの関係に苦悩するマイケルの心情に沿って再構成していく。過去と現在を行き来する時間が、戦後育ちの青年に突然突きつけられた戦争の影をスクリーンに広げ、甘い思い出に終わるはずだった恋が、マイケルの人生を苦渋の色に染めていく経緯をくっきりと描写していくのだ。
マイケルだけが知っているハンナの秘密を裁判長に告げることで彼女を救えたかもしれないのに、死に変えてもその秘密を守ろうとするハンナを裏切るようでそれもできず。かといって、彼女を説得して告白させるには、引き受けなければならないものの重さにたじろいでしまう。その結果、苦悩の一生を送ることになる彼に、ドイツの戦後世代の誠実さを見たような思いだ。愛する者たちの罪をあっさり許すことも、弁護して救うこともできないけれど、一緒に苦しみを抱えて生きることはできる。そうすることで歴史に対する責任を取ろうとする真摯な生き方に、胸を打たれた。(森山京子)
監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
評価 | 4.36 |
解説
ナチによるユダヤ虐殺をまのあたりにしたドイツ人実業家オスカー・シンドラーは、秘かにユダヤ人の救済を決心する。彼は労働力の確保という名目で、多くのユダヤ人を安全な収容所に移動させていくのだが……。スピルバーグが長年あたためていたT・キニーリーの原作を遂に映画化。念願のアカデミー賞(作品・監督・脚色・撮影・編集・美術・作曲)に輝いた作品。
監督 | メル・ギブソン |
評価 | 4.01 |
解説
俳優として数々の話題作に出演し、監督としては『ブレイブハート』でオスカーも手にしたメル・ギブソンがメガホンを取って放つ感動作。第2次世界大戦中に銃を持たずに戦地入りし、多くの負傷した兵士を救った実在の人物をモデルに奇跡の逸話を描く。主人公を『沈黙 -サイレンス-』などのアンドリュー・ガーフィールドが熱演。自身の信念に基づき、勇気ある行動をとった兵士の物語が胸を打つ。
あらすじ
第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという信念を持ち、軍隊に入ってもその意思を変えようとしなかった。彼は、人の命を奪うことを禁ずる宗教の教えを守ろうとするが、最終的に軍法会議にかけられる。その後、妻(テリーサ・パーマー)と父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、デズモンドは武器の携行なしに戦場に向かうことを許可され……。
映画レポート
ヴァージニアでの少年時代、誤って兄を煉瓦で殴打してしまった少年は、その時、自宅の壁に貼られた“汝、殺すなかれ”という神の教えを幼心に刻みつける。後に第2次世界大戦の沖縄戦線に衛生兵として従軍し、武器を持たずに人命救助に徹した実在の兵士、デスモンド・ドスの偉業のルーツである。
信仰とはかくも強靱なのかと思う。何しろ、“ハクソー・リッジ(ノコギリ崖)”と呼ばれる断崖の先に広がる高地での攻防戦では、物量で勝るはずの米軍が、其処此処に掘った塹壕に身を潜めて奇襲を仕掛ける日本軍相手に、絶望的にも思える持久戦を強いられる。火薬の煙が周囲に充満し、地面には体内から飛び出た臓物が転がる中、ドスは、被弾し傷ついた兵士たちにモルヒネを投与し、担架に乗せて高地と崖の間を頻繁に往復するのだ。
メル・ギブソン監督は信仰を描くために、あえて戦場の悲惨を過剰に演出したのかも知れない。終わりのない救援作業に疲弊し切ったドスは、ある瞬間、神に向かって「我は何をすべきか?」と問いかける。そして、もう1人、後もう1人と、渾身の力を振り絞って救出を続けた結果、最終的に彼が救った兵士の数は75名にも及んだ。果たしてそれは、信仰がもたらした結果だったのだろうか。
実は、75名の中に2名の日本人兵士がいた。ドスは人を殺すのではなく、人を助けるために衛生兵を志願したのであり、助ける対象を区別しなかった。区別することは、信仰以前に、人としての信念を放棄することに均しかったからだ。「信念を曲げたら生きていけない」とは、劇中のドスの台詞である。
偶然か否か、アンドリュー・ガーフィールドが主演する先行の「沈黙 サイレンス 」と、それから遅れること5カ月後に公開される本作「ハクソー・リッジ」は、同じ日本を舞台に信仰と戦争について深く言及している。そこで描かれる事柄は、我々日本人にとって決して心地よいものばかりではないけれど、カオスの時代を生きる人々の重要な道しるべとなる区別(または差別)と信念を描くべき舞台が、ここ日本だったということ。それはもしかして、何らかの教えなのかも知れない。
監督 | モルテン・ティルドゥム |
評価 | 4.12 |
解説
第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピューターの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。監督は『ヘッドハンター』などのモルテン・ティルドゥム。キーラ・ナイトレイをはじめ、『イノセント・ガーデン』などのマシュー・グード、『裏切りのサーカス』などのマーク・ストロングら実力派が共演。
あらすじ
第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。
映画レポート
つくづく得体の知れない映画だ。表向きは数学者がナチスの暗号「エニグマ」を解読しようと奮闘する英国ミステリー。しかし観客がその全貌を捉えたかと思うと本作は瞬時に身を翻し、伝記、サスペンス、社会派、人間ドラマと光が乱反射を繰り返すように色調を変えていく。
第2次大戦下、ケンブリッジ大学の研究者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は誘いを受けて田舎町の政府施設を訪ねる。そこで託された極秘任務こそ戦争の行方を左右する暗号解読の仕事だった。本作は軍部やMI6などを巻き込みながら彼が史上最強と謡われた「エニグマ」に挑む過程をスリリングに描き出す。と同時に、大変な変わり者だったと言われるチューリングの人物像を、幼少期の記憶にも寄り添いつつ、パズルのように組み立てていくのも忘れない。
このチューリング、昔から「人と違う」ことに悩み続けてきた男でもあった。やがて観客は暗号解読が彼にとってどれほど重要な意味を持つ行為なのかを知るだろう。とりわけ後半、巨大な暗号解読マシンが答えを求めて延々と動き続ける様子は、まるで誰かと繋がりたいと必死に手を伸ばすチューリングそのもののように見えて思わず胸が張り裂けそうになる。
やがて信頼できる仲間や恋人にも恵まれ、研究は大きく前進し始める。そうした中で本作が「エニグマ」という巨大な壁のみならず、社会の価値観、差別、偏見という「越えるべき壁」をも果敢に映し出すのが印象的だ。自分の理解の及ばないものは排除しようとする空気は今なお根強く残るが、ひとつの糸口をこうして普遍的テーマへと昇華させていく手腕もまた、脚本(手掛けたグレアム・ムーアはアカデミー賞脚色賞を獲得)の秀逸さと言えよう。
そして、かくも複雑な色調を放つ本作を、カンバーバッチの真っ直ぐな存在感が見事に一本の柱として貫いた。巨大な謎に挑む究明者にして、自分自身もまた謎そのものであるという難しい役どころを、たった一個の身体で表現し得たその凄み。役者としての巧さ、演技の奥深さに震える一作である。(牛津厚信)
監督 | アン・リー |
評価 | 4.14 |
解説
日本軍占領下の上海、そして香港を舞台にチャン・アイリンの自伝的短編を『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督が映画化したサスペンス・ドラマ。1万人のオーディションで選ばれた、女スパイを演じるタン・ウェイは大胆な描写にも体当たりで臨み、演じ切る。トニー・レオンの完ぺきな中国語にも注目。総製作費40億円をかけた映像美も見逃せない。
あらすじ
1940年前後、日本軍占領下の上海。ワン(タン・ウェイ)は女スパイとしてイー(トニー・レオン)のもとへ送られる。しかし、大臣暗殺を企てる抗日青年との間で心が揺れ動くワンは……。
映画レポート
すでに開始から5年が経過しようとする戦争の渦中にあって1942年の上海は実質的に日本の支配下にあり、その手先である現政権は抗日運動を企てる自国民に厳しい弾圧を加えている。本作のヒロインは激しい時代の流れの中で抗日運動に身を投じ、女スパイとして弾圧側のスパイ組織のボスに色じかけ(?)で接近、彼の心をつかむことに成功するが、見せかけであったはずの彼らの恋愛がいつしか本物のそれと見分け難くなる……。
監督 | アルチュール・アラリ |
評価 | 3.86 |
解説
実在の旧日本軍兵士・小野田寛郎氏を題材にしたドラマ。上官からの命令をかたくなに守り、太平洋戦争が終結した後も約30年にわたってフィリピン・ルバング島に残り続けた彼の姿を描く。監督は『汚れたダイヤモンド』などのアルチュール・アラリ。『それでも、僕は夢を見る』などの遠藤雄弥、『山中静夫氏の尊厳死』などの津田寛治、『泣く子はいねぇが』などの仲野太賀のほか、松浦祐也、千葉哲也、カトウシンスケ、井之脇海らが出演する。
あらすじ
太平洋戦争末期の1944年。特殊訓練を受けていた小野田寛郎に、ある命令が下る。それはフィリピン・ルバング島で援軍部隊が到着するまでゲリラ戦を指揮せよというものだった。出発前に上官の谷口(イッセー尾形)から「君たちには、死ぬ権利はない」と言い渡された小野田は、その言葉を守って終戦後もジャングルで身をひそめていた。やがてそんな彼の存在を知った旅行者の青年が、ルバング島の山奥に赴く。
監督 | デヴィッド・エアー |
評価 | 3.50 |
解説
ブラッド・ピットと『サボタージュ』などのデヴィッド・エアー監督がタッグを組み、ナチスドイツ相手に戦車で戦いを挑む男たちの姿を描く感動の戦争ドラマ。第2次世界大戦末期、戦車を駆使して敵軍に立ち向かう5人の兵士たちの過酷なバトルを追う。『欲望のバージニア』などのシャイア・ラブーフや、『ウォールフラワー』などのローガン・ラーマンらが共演。アメリカとドイツ双方が誇る戦車の激突はもとより、強い絆で結ばれた男たちのドラマが琴線に触れる。
あらすじ
1945年4月、ナチスがはびこるドイツに総攻撃を仕掛ける連合軍に、ウォーダディーというニックネームのアメリカ人兵士(ブラッド・ピット)がいた。カリスマ性のあるベテラン兵士である彼は、自らフューリーと名付けたアメリカ製の中戦車シャーマンM4に3人の兵士と一緒に乗っていた。そんなある日、ウォーダディーの部隊に新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が加わることになり……。
映画レポート
なんとか予定通り公開に漕ぎ着けたものの、本作は本国公開のギリギリのスケジュールまで追加撮影やポストプロダクションが行われていた。理由は、製作総指揮/主演のブラッド・ピットと監督デビッド・エアーの並々ならぬディテールへのこだわりだったという。ミリタリーマニアにとっては、「歴史的に最も重要な戦車」と言われる本物のティガー戦車(ちなみに敵軍の戦車です)が劇中で活躍していることが大きな売りとなっている本作だが、ディテールというのはそうしたメカ的な部分だけではない。「本当の戦争とはどういうものなのか?」ということを、物語や思想やロジックではなく、映像のディテールの積み重ねによって観客に体感させること。その点において、本作は「プライベート・ライアン」以降、最も重要な戦争映画だと言える。
「本当の戦争とはどういうものなのか?」。潜水艦隊員としてアメリカ海軍に従軍経験もあるデビッド・エアーは、それを「つらくて、怖い」ものと定義する。どちらが正義でどちらが悪だとか、どちらが勝ってどちらが負けたとか、そんなことは世界史の授業の話でしかない。敵味方関係なく、最前線にいる兵士にとってそれはただ「つらくて、怖い」ものなのだ。本作のタイトルは、主人公たちが乗り込む戦車のニックネームの「フューリー」(=怒り)からとられているが、それが本当に意味しているのは、そんな「つらくて、怖い」最前線にいる人々(兵士だけでなく戦場となった土地の住人も含む)の行き場のない「怒り」だ。
これまでの監督作4本すべてが警察ものという、ジャンルムービーの担い手であったデビッド・エアー。「ワールド・ウォーZ」、「それでも夜は明ける」と、このところプロデューサーとしても非凡な才覚を発揮しているブラッド・ピット。両者にとって大いなる野心作となった本作は、批評面でも興行面でも世界中で見事な成果を収めている。物語の舞台は第二次世界大戦末期のドイツにおける連合軍とナチスの戦いだが、映画史における突出した戦争映画の多くがそうであったように、本作はまさに今この世界で起こっている/起ころうとしている出来事にも通じる、人間という愚かな生き物の本質を暴いた作品でもある。(宇野維正)
監督 | 安田賢司 |
評価 | 4.26 |
解説
1979年に放送された「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」をモチーフにした劇場版アニメーション。銀河で領土をめぐる星間戦争が勃発し、有事に備えてヤマトの新艦長となった古代進と新クルーらが訓練航海へと旅立つ。アニメーション制作をサテライトが手掛け、監督を『マクロスΔ』シリーズなどの安田賢司が務める。ボイスキャストは古代役の小野大輔をはじめ、桑島法子、大塚芳忠、山寺宏一、井上喜久子、畠中祐などが担当する。
あらすじ
白色彗星帝国との戦いから3年後。アベルト・デスラー総統はガミラス民族の新たな母星を求めてある星にたどり着くが、その周辺を領域とする強大な星間国家との争いが勃発。ガミラスと安全保障条約を結ぶ地球も戦いに巻き込まれ、地球に軍事的・経済的優位性をもたらしていた時間断層が消滅してしまう。ヤマトの新艦長となった古代進は新クルーらと共に、有事に備えた訓練航海へと旅立つ。
監督 | タイカ・ワイティティ |
評価 | 4.16 |
解説
『マイティ・ソー バトルロイヤル』などのタイカ・ワイティティ監督がメガホンを取り、第2次世界大戦下のドイツを舞台に描くヒューマンドラマ。ヒトラーを空想上の友人に持つ少年の日常をコミカルに映し出す。『真珠の耳飾りの少女』などのスカーレット・ヨハンソンや『スリー・ビルボード』などのサム・ロックウェルらが共演。ワイティティ監督がヒトラーを演じている。
あらすじ
第2次世界大戦下のドイツ。10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)は、青少年集団ヒトラーユーゲントに入団し、架空の友人であるアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)に助けられながら一人前の兵士を目指していた。だがジョジョは訓練中にウサギを殺すことができず、教官に“ジョジョ・ラビット”というあだ名を付けられる。
映画レポート
ナチスドイツの末期を舞台にした映画にしては、「ジョジョ・ラビット」の幕開けはカラフルでコミカル。戦時中の映像に被さって聞こえるのは、ビートルズの「抱きしめたい」ドイツ語バージョンだ。そしてこの冒険作は「早く立派なドイツ兵になりたい」と願う我らが主人公、10歳のジョジョへとフォーカスする。
ナチスの青少年団ヒットラーユーゲントのキャンプに参加したジョジョは、任務を果たせず「臆病なジョジョ・ラビット」とからかわれる。そんな彼を力強く励ますのは、憧れの結晶とも言うべき脳内フレンドのアドルフ・ヒットラー(タイカ・ワイティティ監督が自ら演じている!)だ。
映画界で最もポピュラーなジャンルの1つであるナチスものは、これまでにも風刺ユーモアを打ち出す大胆なアプローチが何度もなされてきた。だが、この映画はひと味違う。ワイティティ監督が誠実に描くのは、10歳男児の目を通して見た“戦争”という世界であり、戦時下に置かれた男児の“心”。10歳くらいの男の子というのはたいてい女の子より未熟であり、無知で愚かで純粋で無垢。経験の足りなさゆえ、妄想と思い込みの中に棲息するマジメな生き物なのだ。この映画のユーモアはほとんどが、そういう愛すべき男児のアホさ、けなげさ、滑稽さ、かわいさから来ている。脳内アドルフがどこか間抜けなのも、ジョジョの分身だから。これまで戦争映画における男の子は子供らしさを封じられることが多かったが、これは戦争映画である以前に“男の子”のリアルを見事に映し出した映画といえるのだ。
男児の描写は当然、“戦争”の非道さをクッキリと浮かび上がらせる。このバランスが絶妙。ジョジョのキャンプは序盤、ウェス・アンダーソンの牧歌的な「ムーンライズ・キングダム」を思わせるが、もちろん彼だって容赦ない現実の厳しさ、醜さに直面せざるを得ない。彼は優しく勇敢なママが、憎むべきユダヤ人の少女を家の中に匿っていることを発見し、パニックに。そしてこの少女との出会いが、すべてを変える。
この映画が見せるのは、影響を受けやすく、間違いやすく、それでも正しさを追い求めようとする人間の思い。「ライフ・イズ・ビューティフル」の幼いジョズエよりずっと成熟しているジョジョは気づき、成長し、失い、そして愛を知る。彼を取り巻く大人たち(スカーレット・ヨハンソンのママ、サム・ロックウェルの大尉)の描き方も、胸を打つ。しかし何より、10歳児のリアルを本能的に表現しきったローマン・グリフィン・デイビスくんの演技! これはもう奇跡と言っていいレベル。くるくる変わる小さな名優の表情1つ1つが、心を鷲掴みにする映画だ。(若林ゆり)
監督 | サム・メンデス |
評価 | 4.04 |
解説
第1次世界大戦を舞台にした戦争ドラマ。戦地に赴いたイギリス兵士二人が重要な任務を命じられ、たった二人で最前線に赴く物語を全編を通してワンカットに見える映像で映し出す。メガホンを取るのは『アメリカン・ビューティー』などのサム・メンデス。『マローボーン家の掟』などのジョージ・マッケイ、『リピーテッド』などのディーン=チャールズ・チャップマン、『ドクター・ストレンジ』などのベネディクト・カンバーバッチらが出演する。全編が一人の兵士の1日としてつながって見えることで、臨場感と緊張感が最後まで途切れない。
あらすじ
第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙(たいじ)する中、イギリス軍兵士のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に、ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えていた。
映画レポート
これはかつてない戦場の疑似体験だ。観客は英軍の若き伝令兵たちをリアルタイムで追う長回し映像を通じて、塹壕、無人地帯、廃墟の町、そしてドイツ軍と対峙する最前線を“ともに駆け抜ける”感覚を味わう。
実際に第1次世界大戦の英軍で伝令兵だった祖父の体験談から、本作「1917 命をかけた伝令」の着想を得たのは名匠サム・メンデス。撮影監督には「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」「007 スカイフォール」でも組んだロジャー・ディーキンス(「ブレードランナー 2049」で2018年のアカデミー賞撮影賞を受賞)を起用し、4K強の解像度を持つ新開発の小型カメラ「アレクサ・ミニLF」とステディカム、クレーン、ワイヤーを巧みに組み合わせ、兵士たちの息遣いが伝わるクローズアップから地を這い天を舞うように自在な移動ショットまで、まるで全編がワンカットで撮影されたかのような驚異の映像を完成させた。
舞台は1917年、西部戦線。英軍の後方部隊は航空写真により、前線から撤退したと思われたドイツ軍が大規模な砲兵隊で待ち構えていることを知る。最前線の1600人の友軍に、突撃予定の翌朝までに作戦中止を伝えなければ全滅してしまう。通信手段が絶たれた状況で、地図を読むのが得意なブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)と、たまたまブレイクに選ばれたスコフィールド(ジョージ・マッケイ)が、伝令の任務を命じられる。前線には実兄もいることから一刻を争うブレイクと、爆弾のトラップや狙撃の危険を恐れ慎重に進みたいスコフィールド。この微妙な温度差が、中盤以降の展開に活きてくる。比較的知名度の低い若手俳優2人をキャスティングしたのは、話の先を読ませない狙いもあっただろう。
有名スターが演じない効用はもう一つ、2人が私たちと変わらない普通の人間だと感じやすい点。戦場で朽ちかけた死体に飛び上がり、狙撃される恐怖におびえ、桜の花を見ては故郷の果樹園と家族を想う。普通の若者だと信じられるからこそ、極限状況で勇気を振り絞る彼らに感情移入する観客の体感度も一層増すのだ。なお第1次大戦つながりで、ピーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー「彼らは生きていた」も日本で先月公開された。こちらは当時のアーカイブ映像を修復し着色して製作したものだが、やはり英国の若者たちが志願して兵士となり、前線に派遣されるという構成になっている。2作を合わせて観ると、軍隊に入り戦場に赴くということがどういう体験なのか、より深く考えさせられることになるだろう。
監督 | オリヴァー・ヒルシュビーゲル |
評価 | 3.94 |
解説
本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた衝撃作。監督は『es』のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。『ベルリン・天使の詩』のブルーノ・ガンツがヒトラーにふんしている。本国ドイツでは映画公開自体が一つの事件として大きな社会現象を巻き起こした作品。
あらすじ
1945年4月20日、ベルリン。ソ連軍の砲火を避けるために、ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)はドイツ首相官邸の地下要塞に退却していた。すでに正常な感覚を失っていたヒトラーは部下に実現不可能と思える作戦を熱く語っていた。
監督 | 大島渚 |
評価 | 3.63 |
解説
第二次世界大戦下のジャワ山中の日本軍捕虜収容所を舞台に、極限状態におかれた男たちの心の交流を描いた人間ドラマ。「愛のコリーダ」の大島渚監督が、デヴィッド・ボウイ、ビートたけし、坂本龍一といった異色のキャストで撮り上げた話題作。1942年。ジャワ山中の日本軍捕虜収容所。そこには単純で粗暴な軍曹ハラと日本語が流暢な英国軍中佐ロレンス、そして収容所長のヨイノ大尉がいた。そこへある日、英国軍少佐セリアズが連れてこられた……。
監督 | ローランド・エメリッヒ |
評価 | 3.10 |
解説
太平洋戦争を題材にした戦争ドラマ。真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦に至るまでを、日米の軍人たちを通して描く。監督は『インデペンデンス・デイ』シリーズなどのローランド・エメリッヒ。『トランスポーター イグニション』などのエド・スクライン、『死霊館』シリーズなどのパトリック・ウィルソン、『ゾンビランド』シリーズなどのウディ・ハレルソン、『僕のワンダフル』シリーズなどのデニス・クエイドに加え、日本からは豊川悦司、浅野忠信、國村隼らが出演する。
あらすじ
山本五十六(豊川悦司)、山口多聞(浅野忠信)、南雲忠一(國村隼)率いる日本軍の艦隊が真珠湾を攻撃する。戦艦エンタープライズの艦長ハルゼー(デニス・クエイド)は、パイロットのディック(エド・スクライン)と彼の隊に日本軍艦隊の追跡を命じた。アメリカ軍のニミッツ最高司令官(ウディ・ハレルソン)とレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)は、次の戦闘に備えるため日本軍の戦略を分析し、やがてミッドウェイで両軍が激突する。
監督 | 片渕須直 |
評価 | 3.92 |
解説
「長い道」「夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックをアニメ化したドラマ。戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追い掛ける。監督にテレビアニメ「BLACK LAGOON」シリーズや『マイマイ新子と千年の魔法』などの片渕須直、アニメーション制作にテレビアニメ「坂道のアポロン」や「てーきゅう」シリーズなどのMAPPAが担当。市井の生活を壊していく戦争の恐ろしさを痛感する。
あらすじ
1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。
映画レポート
大災害や戦争の影響を語る時、我々はしばしば犠牲者の数によってそれを語ろうとする。だがその数の裏には、犠牲者の分だけ途方もない悲しみが積み重なっている。人の命の重みは数によって決まるものではない。交通事故で家族を失った悲しみと戦争のそれとに、どれほどの違いがあるのか。積み重なった悲劇の山の大きさを知ることも重要だが、その積み上げられた、塵のようなひとつひとつの人生を想像する力を決して忘れてはならない。
こうの史代原作、片渕須直監督「この世界の片隅に」はそんな小さな物語への視点を大切にする作品だ。本作は戦争を伝える作品ではなく、戦争のある日常を伝える作品だ。原作のあとがきの言葉を借りれば「戦時下の生活がだらだらと続く作品」。日常のなかに平然と悲劇が入り込む戦時下の特殊性と、食べたり、笑ったり、喧嘩したり、愛したりといった普遍的な営みが同居する。少ない配給の中で工夫する食事がとても美味しそうで、間抜けなことにはみんな笑い、連日やってくる空襲警報にも次第に慣れ、防空壕の中で世間話に花が咲く。そんな日常を温かみある手描きの作画で切り取ってゆく。
とにかく、画面に映る人が、風が、海が、瑞々しい輝きを放ち、もうほとんどの日本人が体験したことのないはずの時代の息吹が画面の隅々から発せられている。漆黒のスクリーンにすうっと画面が映し出されてまもなく、この世界に引き込まれてゆく感覚。素朴で美しいアニメーションと声優陣の素晴らしい演技が一糸乱れず調和し、この時代に生きたことはないのに懐かしさが胸いっぱいに広がる。特に出色なのは主人公すず役ののん。芝居の良し悪しの次元を飛び越えて「すずさん」としてフィルムの中で生きている。
観客はこの映画を見ている最中、すずさんと共に生きるのだ。戦時下の過酷な時代にあっても、人間らしくあろうとする彼女と共に生きることを許してくれるこの126分間は、なんて幸せな時間なのだろうと心から思える作品だ。
監督 | テレンス・マリック |
評価 | 3.32 |
解説
1942年、ソロモン諸島。アメリカ軍は日本軍の駐留するガダルカナル島を、太平洋戦争の重要な拠点と見なしその占拠を図った。ウィット二等兵(ジム・カヴィーゼル)やウェルシュ曹長(ショーン・ペン)をはじめとするアメリカ陸軍C中隊の面々も作戦に参加、彼らを乗せた上陸用舟艇は美しい南洋の孤島に次々と上陸していく。だが一歩ジャングルの奥に足を踏み入れると、そこは紛うことなき戦場であった……。
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