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監督 | 森義仁 |
評価 | 3.65 |
解説
[Netflix作品]作家などとして活動する燃え殻の小説を原作に、ドラマ「恋のツキ」などの森義仁が監督を務めたドラマ。普通とは違う人物を目指すものの何者にもなれなかった男性が、25年という月日を振り返る。『アンダードッグ』シリーズなどの森山未來、『タイトル、拒絶』などの伊藤沙莉、『草の響き』などの東出昌大、『TOURISM』などのSUMIREのほか、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人らが出演する。
あらすじ
1995年。佐藤(森山未來)は、文通相手のかおりと原宿のカフェで会う。「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」と言われ、普通じゃない自分を目指していた佐藤は、その言葉を支えにテレビの美術制作会社で懸命に働きながら小説家を目指す。その後かおりが去り、小説家にもなれなかった彼は、テレビ業界の片隅で働き続けていた。バーテンダーのスー(SUMIRE)との出会い、恋人の恵(大島優子)との別れなどを経て、気が付けば佐藤は46歳になっていた。
監督 | 穐山茉由 |
評価 | 3.88 |
解説
MOOSIC LAB 2018 長編部門グランプリを獲得した『月極オトコトモダチ』などの穐山茉由監督が、大人に成り切れない20代の女性の心理を描く青春ドラマ。高校卒業から10年後、3人の同級生が取り壊しになる母校に週末ごとに集まり、昔の思い出や現在の不満を語り合う。元乃木坂46で『あさひなぐ』などの桜井玲香が映画初主演を務め、同級生を『mellow メロウ』などの岡崎紗絵、『明日、キミのいない世界で』などの三戸なつめが演じる。
あらすじ
かつて雑誌のグラビアを飾っていたモデルの美玲(桜井玲香)は、10年前に女子高の放送クラブの仲間だったアンディ(三戸なつめ)、まりりん(岡崎紗絵)と、取り壊しになる母校にタイムカプセルを捜しに行く。学校に忍び込んだものの、タイムカプセルは見つからず、また翌週に集まることにする。当時に戻ったような気分の3人だったが、事態は思わぬ方向へと進んでいく。
監督 | 永井聡 |
評価 | 4.19 |
解説
眉月じゅんのベストセラーコミックを原作にしたラブストーリー。ファミレスの店長の男と、彼に心を奪われた女子高校生が織り成す恋模様をつづる。メガホンを取るのは『世界から猫が消えたなら』『帝一の國』などの永井聡。『渇き。』『溺れるナイフ』などの小松菜奈、『探偵はBARにいる』シリーズや『アイアムアヒーロー』などの大泉洋が主演を務める。28歳という年齢の差がありながらも心を通わせていく主人公たちの姿を繊細に描く。
あらすじ
陸上競技に打ち込んできたが、アキレス腱のけがで夢をあきらめざるを得なくなった高校2年生の橘あきら(小松菜奈)。放心状態でファミレスに入った彼女は、店長の近藤正己(大泉洋)から優しい言葉を掛けてもらったことがきっかけで、この店でアルバイトを始めることにする。バツイチ子持ちである上に28歳も年上だと知りながらも、彼女は近藤に心惹(ひ)かれていく。日増しに大きくなる思いを抑え切れなくなったあきらは、ついに近藤に自分の気持ちを伝えるが……。
監督 | 蜷川幸雄 |
評価 | 2.78 |
解説
自らの舌にピアスを開け、背中に入れ墨を彫り肉体改造におぼれていくヒロインの愛と絶望の日々描く衝撃ドラマ。弱冠20歳で芥川賞を受賞した金原ひとみの同名原作を世界的演出家の蜷川幸雄が監督として完全映画化。ヒロインを『紀子の食卓』の吉高由里子が熱演。彼女を愛する男たちを高良健吾、ARATAが好演するほか、小栗旬、唐沢寿明、藤原竜也ら蜷川組が顔をそろえる。壮絶なバイオレンス描写が物議を醸す問題作。
あらすじ
蛇のように割れた舌を持つ男アマ(高良健吾)と出会った19歳のルイ(吉高由里子)は、自分とはまったく違う世界に住む彼と付き合いつつ、アマの紹介で知り合った彫り師シバ(ARATA)とも関係を持ち始める。ルイはピアスを開け、背中に入れ墨を彫り身体改造の痛みと快楽に身を委ねる日々を送るが、どこか満たされぬ思いを抱えていた。
監督 | 谷口正晃 |
評価 | 4.00 |
解説
映画化もされた『神童』『マエストロ!』などで知られる、さそうあきらの漫画を原作にした音楽ドラマ。芸術大学に進んだ青年が、人々との交流を通して自身の音楽を作り上げていく。メガホンを取るのは『父のこころ』などの谷口正晃。『ザ・ファブル』シリーズなどの井之脇海、『酔うと化け物になる父がつらい』などの松本穂香、NHKの連続テレビ小説「エール」などの山崎育三郎らが出演する。
あらすじ
京都の芸術大学に入学した漆原朔(井之脇海)。無理やり現代音楽研究会へと引き込まれた彼は、そこに異母兄の貴志野大成(山崎育三郎)とその恋人・小夜が所属しているのを知る。自分を音楽から遠ざけるきっかけになった存在である上に、天才作曲家として注目される大成を前にざわついた感情を抱く朔。しかし、幼いころから目にする色や物の形を脳内で音に変換させてきた彼は、それらを音楽にできることに気づく。そして、同じ感覚で自然界の音を捉える浪花凪(松本穂香)と出会う。
監督 | 英勉 |
評価 | 3.14 |
解説
原作・井上堅二、漫画・吉岡公威のコミックを実写映画化した学園コメディー。楽しいキャンパスライフを夢見ていた主人公たちの青春の日々を描く。『獣電戦隊キョウリュウジャー』シリーズなどの竜星涼と『仮面ライダービルド』シリーズなどの犬飼貴丈が主演を務め、『あさひなぐ』などの英勉監督がメガホンを取る。乃木坂46の与田祐希をはじめ朝比奈彩、小倉優香、石川恋、高嶋政宏らが共演。
あらすじ
伊織(竜星涼)は、青い海に囲まれた離島にある伊豆大学に入学し、気さくな仲間やかわいい女子と大学生活をエンジョイすることだけを夢見ていた。だがオリエンテーション当日の朝、大勢の人が集まった大学の講堂で、伊織は記憶がないまま素っ裸で目を覚まし、自分と同じ状況の耕平(犬飼貴丈)出会う。
監督 | loundraw |
評価 | 3.41 |
解説
映画化もされた小説「君の膵臓をたべたい」「君は月夜に光り輝く」の装画などで知られるイラストレーター、loundrawが監督を務めた短編アニメーション。“サマーゴースト”と呼ばれる幽霊にまつわる都市伝説をめぐり、インターネットを通じて出会った少年少女のひと夏を描く。アニメーション制作をloundrawが設立した FLAT STUDIO、脚本を作家・乙一としても知られる『シライサン』などの安達寛高、音楽を『朝が来る』などの小瀬村晶が担当。主人公の声を小林千晃が務める。
あらすじ
花火をすると現れるという若い女性の幽霊“サマーゴースト”という都市伝説がささやかれていた。そんな中、高校生の杉崎友也、春川あおい、小林涼の3人はインターネットを通じて知り合う。親に逆らえない友也は自分の夢に踏み出せず、学校でいじめられているあおいはどこにも居場所がなく、涼は病気により明るい未来を諦めていた。それぞれに葛藤を抱える彼らは、サマーゴースト探しに乗り出す。
監督 | 篠原哲雄 |
評価 | 4.09 |
解説
実在した大学のサークル活動をつづった片野ゆかのノンフィクション小説を映画化。“犬バカ”の獣医学部生が仲間と共に動物保護に奔走する大学時代と、獣医師として新たな問題に立ち向かう現代という二つの時代構成で、動物の命と向き合う人々の奮闘を描く。動物愛護サークル「犬部」を設立する主人公を『私をくいとめて』などの林遣都、彼の親友を『虹色デイズ』などの中川大志が演じる。『花戦さ』などの篠原哲雄が監督を務め、『犬に名前をつける日』などの山田あかねが脚本を手掛けた。
あらすじ
獣医学部の学生・花井颯太(林遣都)は幼いころから動物愛護活動に奔走し、一人暮らしのアパートは保護した動物でいっぱいだった。ある日心を閉ざした1匹の実験犬を救った彼は、より多くの命を救うため動物愛護サークル「犬部」を立ち上げる。颯太と同様に“犬バカ”である同級生・柴崎涼介(中川大志)らも仲間に加わり、彼らは保護活動に取り組んでいく。16年後、変わらぬ信念で動物保護に関わってきた颯太が逮捕されてしまう。
監督 | 萩原健太郎 |
評価 | 3.94 |
解説
『OVER DRIVE』で共演した新田真剣佑と北村匠海主演によるラブストーリー。亡きミュージシャンが遺(のこ)したカセットテープが再生されている間に起こる不思議な出来事から始まる物語を描く。メガホンを取るのは『東京喰種 トーキョーグール』などの萩原健太郎。『春夏秋冬物語』などの葉山奨之、『リバーズ・エッジ』などの上杉柊平、『うちの執事が言うことには』などの清原翔らが共演。
あらすじ
他人と関わることが苦手で就職活動もうまくいっていない大学生の颯太(北村匠海)は、ある日1年前に他界したバンドミュージシャンのアキ(新田真剣佑)が遺(のこ)したカセットテープを拾う。テープを再生してみると、その30分の間だけ颯太の中身がアキになる。アキは颯太の体を借りて、恋人やバンドのメンバーとの再会を果たす。
監督 | 大根仁 |
評価 | 3.91 |
解説
『サニー 永遠の仲間たち』を、『モテキ』シリーズや『バクマン。』などの大根仁監督がリメイクした人間ドラマ。舞台を韓国から日本に移し、仲の良かったコギャルたちの22年後の姿を、1990年代の音楽やファッションを交えて描く。40歳の主人公とその高校生時代を『アンフェア』シリーズなどの篠原涼子と『ちはやふる』シリーズなどの広瀬すずが演じるほか、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美、池田エライザ、板谷由夏らが出演する。
あらすじ
夫と高校生の娘と暮らす40歳の専業主婦、阿部奈美(篠原涼子)は、日々の生活に空しさを感じていた。一方、独身で39歳の社長・伊藤芹香は、ガンで余命1か月を宣告されてしまう。およそ22年ぶりに再会した芹香にもう一度みんなに会いたいと告げられた奈美は、ある事件が原因で音信不通になった仲良しグループ“SUNNY(サニー)”のメンバーを捜そうとする。
映画レポート
2011年の韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」の日本版リメイクと聞いて、商魂ばかりが匂う安易な企画だと感じた人は筆者だけではないだろう。しかも90年代のコギャル文化に置き換え、オザケンや安室奈美恵の90年代ヒットソングを盛り込むとは、オリジナルを熱く支持した中年層を完全にロックオン!だ。
とかく「あざとい」要素が目に付くことは否定できないが、大根監督は企画と作品の価値は決してイコールではないと改めて証明してくれる。もしあなたがオリジナルのファンならば、この日本版リメイクもきっと楽しめる。オリジナルに敬意を払い、ドラマの骨子に余計な手を入れたりせず、それでいて工夫も凝らして新鮮にアレンジされているからだ。
けたたましいコギャルたちの青春も、若い女優陣の好演もあってキラキラと輝いている。とりわけ広瀬すずの「田舎からやってきたイタい転校生」っぷりは、彼女の実直ともいえる“捨て身”演技によって、決してオリジナルのシム・ウンギョンに引けを取らず、観ているこちらの口元をほころばせる。
そして、筆者がオリジナルの「サニー」公開時の盛り上がりにまったく乗れなかった人間であることは告白せねばなるまい。あれだけ愛された作品には抗しがたい魅力が備わっていることは間違いないが、正直、自分には楽しめないハードルがいくつもあって、今回のリメイクにもなるべく近づかないでおこうとさえ思っていた。
ところが、だ。完成品を鑑賞して、施された細かな改変が実にクレバーな判断によって為されていることに舌を巻いた。例えばオリジナルにあった「娘をイジメた女子高生グループを、大人が束になってボコボコにする」という問題の本質からズレた解決法はごっそりカット。似たシーンはあるのだが、巧妙に違うシチュエーションで再現されている。
もちろんオリジナルあってのリメイクであり、どっちが上という話ではない。が、本作は後発である利点を活かしたマイナーチェンジがいちいち効いていて、バージョンアップした印象すら受ける上質なリメイクになっているのだ。
最後に特筆しておきたいのが、現代パートに登場するともさかりえの凄味。オリジナルから踏襲されているどこか絵空事のような世界観の中で、短い出番で彼女が醸し出すのっぴきならない深みは、この作品をしっかと現実に結び付ける錨のような役割を果たしている。ともさかだけでも入場料金の元が取れるくらい、神がかった名演技である。(村山章)
監督 | 山戸結希 |
評価 | 2.39 |
解説
映画化もされた「平凡ポンチ」「ピース オブ ケイク」などのジョージ朝倉の人気コミックを映画化した型破りなラブストーリー。東京から田舎町に引っ越して来た美少女と、個性的な少年の出会いを軸に、10代特有のヒリヒリとした青春の日々を描写する。主演は、小松菜奈と菅田将暉。監督を務めるのは原作の大ファンだという『5つ数えれば君の夢』などの山戸結希。原作が持つ独特の世界観をスクリーンに焼き付けた物語に魅了される。
あらすじ
東京で雑誌モデルを務める望月夏芽(小松菜奈)は、急に父親の郷里である浮雲町に転居することになる。彼女は都会とはかけ離れた田舎での地味な生活に幻滅してしまうが、長谷川航一朗(菅田将暉)と出会ったことで人生が一変する。彼は田舎町で有名な神主の一族の出身で、夏芽はひねくれ者で一風変わった航一朗に強く惹(ひ)き付けられる。
監督 | 三木孝浩 |
評価 | 2.81 |
解説
高校時代から社会人にかけての若さならではのピュアな恋を切なく描いた人気コミックを、『ハナミズキ』の生田斗真と『蛇にピアス』の吉高由里子主演で映画化した2章仕立てのラブストーリー前編。吉高演じる女子高生が、人気者だがどこか陰のある生田演じる男子高校生と惹(ひ)かれ合う過程をつづっていく。監督は、『ソラニン』の三木孝浩。高岡蒼佑、本仮屋ユイカ、小松彩夏、柄本佑、比嘉愛未といった、実力派の若手陣が共演。10代ならではのまばゆい恋模様に胸がときめく。
あらすじ
北海道・釧路に暮らす高校2年の七美(吉高由里子)は、クラスの人気者の矢野(生田斗真)に思いを寄せるように。ふと寂しげな表情を見せる矢野は、かつて事故で失った年上の恋人への思いを引きずっていた。それでもいちずな愛をぶつける七美に、矢野も心を開いていくが……。
監督 | イ・ヨンジュ |
評価 | 3.92 |
解説
韓国で恋愛映画の興行成績を塗り替え、大ブームを巻き起こした恋愛ドラマ。建築家の男性が大学時代の初恋の女性に仕事を依頼されたことにより動き出す二人の関係を、過去の記憶と現在の交流とを交錯させながらつづっていく。主人公の男女を、現代パートでは『私たちの生涯最高の瞬間』のオム・テウンとテレビドラマ「赤と黒」のハン・ガインが、大学時代を『高地戦』のイ・ジェフンとK-POPグループ「miss A」のスジが演じる。鮮やかに描かれる初恋の思い出と揺れ動く二人の感情が、観る者の心をときめかせる。
あらすじ
建築家のスンミン(オム・テウン)のもとに、仕事を依頼しにやって来たソヨン(ハン・ガイン)。ソヨンは、15年前にまだ大学生だったスンミンの初恋の相手だった。ソヨンの実家のあるチェジュ島に新しい家を造りながら、スンミンの脳裏には初恋の記憶がよみがえり、また新たな感情が芽生えていく。しかし、スンミンには婚約をしている女性がいて……。
監督 | トニー・スコット |
評価 | 3.91 |
解説
カリフォルニア州ミラマー海軍航空基地。そこにF-14トムキャットを操る世界最高のパイロットたちを養成する訓練学校、通称“トップガン”がある。若きパイロットのマーヴェリックもパートナーのグースとともにこのトップガン入りを果たし、自信と野望を膨らませる。日々繰り返される厳しい訓練も、マーヴェリックはグースとの絶妙なコンビネーションで次々と課題をクリアしていく。しかしライバルのアイスマンは、彼の型破りな操縦を無謀と指摘する。その一方で、マーヴェリックは新任の女性教官チャーリーに心奪われていく。
監督 | 吉浦康裕 |
評価 | 4.24 |
解説
『イヴの時間』シリーズや『サカサマのパテマ』などの吉浦康裕が監督・原作・脚本を務め、女優の土屋太鳳らがボイスキャストに名を連ねたアニメーション。学業優秀でスポーツ万能、何かと言えばミュージカル調で歌い出す主人公が、転校先の学校で周りの人たちを幸せにしていく。ボイスキャストは土屋のほか、福原遥、工藤阿須加、興津和幸、小松未可子、日野聡などが担当する。
あらすじ
高校生のシオンは転校初日、クラスで孤立するサトミに「わたしが幸せにしてあげる」と宣言し、ミュージカルのように歌い出す。変わり者だが勉強もスポーツもでき、明るいシオンは、すぐにクラスに溶け込む。そして、ところ構わず歌い出したり、突飛な行動で周りを騒動に巻き込んだりしながら、サトミやクラスメートたちの心を動かしていく。
監督 | 沖田修一 |
評価 | 4.00 |
解説
『パレード』『悪人』の原作者として知られる吉田修一が毎日新聞で連載していた作品を映画化。長崎から上京してきたお人よしの主人公の青年と周囲の人々のエピソードが描かれる。主人公とヒロインには、『蛇にピアス』で共演を果たした高良健吾と吉高由里子がふんし、メガホンを『南極料理人』『キツツキと雨』の沖田修一が取る。サンバサークルで披露する太陽の格好をした主人公の姿など、さまざまな要素で楽しませてくれる青春ストーリーに引き込まれる。
あらすじ
長崎県の港町で生まれ育った横道世之介(高良健吾)は、大学に進むために東京へと向かう。周囲の人間を引き付ける魅力を持ち、頼まれたことは何でも引き受けてしまう性格である世之介は、祥子(吉高由里子)から一方的に好かれてしまう。しかし彼は、年上で魅力的な千春(伊藤歩)にぞっこんで……。
映画レポート
誰もがどこか他人でない気がしてしまう。いつも汗にまみれ、不器用で、お調子者。けれど友が悩みに暮れていると全力で応援してくれる存在。それが高良健吾の演じる世之介だ。その立ち位置から言うと彼はある意味、究極の脇役なのかもしれない。しかし吉田修一の青春小説ではそんな彼こそが主役を担う。独特な間合いで惹き付ける沖田修一監督の手腕も相まって、観客の胸には学生時代の記憶が蘇り「あんな奴いたなあ」と顔が綻んでしまうことだろう。
本作は80年代に長崎から上京した世之介が友人とつるんだり、年上の女性に恋したり、富豪の娘に惚れられたりして過ごす1年間をオフビートな笑いで包んだ物語である。と同時に、映画は時折トーンを変え、16年を経た後日談を静かに揺らぐ振り子のごとく垣間見せていくのだ。
そこでは歳を重ねた友人らがそれぞれに世之介のことを想起している。彼について語るとき、誰もが笑顔だ。しかしそこに世之介の姿はない。彼にまつわる80年代の記憶が活気に満ちていればいるほど、00年代における不在は際立つ。さらにある事実が明かされるや、過去を照らす光は世之介というアイコンをよりいっそう愛おしく、神々しく浮かび上がらせていく。
この映画では観客もまた記憶の旅人。80年代カルチャーに満ちた新宿の喧騒にむせ返りそうになり、なおかつ、誰にも自分の人生を力強く肯定してくれた尊い存在があったことを思い起こさせる。そして極めつけは、ぶっ飛んだお嬢様役の吉高由里子が一転して見せる追想の表情だ。張り裂けそうな心の痛みと、記憶の中の歓びが渦巻き、笑顔になって昇華していくこのシーン。160分の旅を終えた筆者の心情もまさに同じだった。人間の心の機微を慈しむ沖田演出の真髄を見た想いがした。(牛津厚信)
監督 | 月川翔 |
評価 | 4.06 |
解説
住野よるの小説を映画化。膵臓(すいぞう)の病を患う高校生と同級生の“僕”の交流を、現在と過去の時間軸を交差させて描く。『エイプリルフールズ』などの浜辺美波と『あやしい彼女』などの北村匠海が主演を務め、現在の僕を小栗旬、ヒロインの親友を北川景子が演じる。監督は『黒崎くんの言いなりになんてならない』などの月川翔、脚本は『アオハライド』などの吉田智子が担当。
あらすじ
高校の同級生・山内桜良(浜辺美波)がひそかにつづる闘病日記「共病文庫」を偶然見つけた僕(北村匠海)は、彼女が膵臓(すいぞう)の病気で余命わずかなことを知り、一緒に過ごすようになる。彼女の言葉をきっかけに母校の教師となった僕(小栗旬)は、桜良が亡くなってから12年後、教え子と会話をしていた際に、桜良と過ごした数か月を思い出す。一方、結婚を控えた桜良の親友・恭子(北川景子)も、桜良との日々を思い返し……。
監督 | 首藤凜 |
評価 | 3.75 |
解説
芥川賞作家・綿矢りさの小説を原作にしたラブロマンス。校内の人気者で優等生の女子高校生、彼女が思いを寄せる同級生、その同級生と密かに交際する病身の女子生徒が織り成す恋模様を描く。メガホンを取るのは『21世紀の女の子』などの首藤凜。『樹海村』などの山田杏奈、ドラマ「DIVE!!」などの作間龍斗、『ソワレ』などの芋生悠のほか、山本浩司、板谷由夏、田中美佐子、萩原聖人らが出演する。
あらすじ
成績優秀で明朗快活な高校3年生の木村愛(山田杏奈)。校内きっての人気者である彼女は、地味で寡黙でありながらも聡明さと謎めいた雰囲気を漂わせる同級生の西村たとえ(作間龍斗)に惹(ひ)かれていた。そんな折、彼が大事そうに手紙を読んでいるのを見かけ、愛はそれを盗み読みしてしまう。手紙を差し出したのは、糖尿病の持病を抱える地味な新藤美雪(芋生悠)だった。二人が交際しているのを知って、言いようの感情に駆られる愛。彼女はたとえへの恋心を隠し、美雪に近づいていく。
監督 | 熊澤尚人 |
評価 | 4.03 |
解説
累計発行部数1100万部を突破し、テレビアニメシリーズも好評を博した人気コミックを実写映画化した学園青春ドラマ。素直で純粋ながら見た目が暗いため孤立しがちな女子高生が、クラスの中心人物の優しさに触れることで徐々に変わっていく姿を描く。主演は、『フィッシュストーリー』の多部未華子と『奈緒子』の三浦春馬。監督は『おと・な・り』の熊澤尚人が務め、コミカルな要素と温かな感動が融合した原作の魅力を見事に映像化した。
あらすじ
見た目が暗く周りから「貞子」と呼ばれる黒沼爽子(多部未華子)は、クラスになじめないでいた。しかし、その外見とは裏腹にけなげで純粋な彼女に、誰からも好かれるクラスの中心的存在の風早翔太(三浦春馬)はひそかに好意を抱いていた。風早の言葉を励みに、爽子は徐々にほかのクラスメートたちと打ち解けるようになっていく。
監督 | 長澤雅彦 |
評価 | 3.53 |
解説
全国の書店員が選ぶ第2回本屋大賞を受賞した、恩田陸の同名ベストセラー小説を映画化した青春ドラマ。24時間かけて80キロを歩く学校行事を通し、高校生の友情や葛藤を描いたのは、『ココニイルコト』『青空のゆくえ』の長澤雅彦監督。出演は『HINOKIO ヒノキオ』の多部未華子、『蝉しぐれ』の石田卓也、『花とアリス』の郭智博など、期待の若手俳優たちが顔をそろえた。ひたすら歩き続ける中で自分と向き合い、成長していく彼らの姿が清々しい。
あらすじ
高校生活最後の伝統行事「歩行祭」を迎える甲田貴子(多部未華子)は、一度も話したことのないクラスメイト西脇融(石田卓也)に話しかけようと考えていた。2人は異母兄妹の間柄で、そのことは誰にもいえない秘密だった。一方、融も貴子を意識しながらも近づくことができず、事情を知らない友人たちが勘違いして、告白するようけしかける。
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