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監督 | 和島香太郎 |
評価 | 3.89 |
解説
女優の加賀まりこが自閉症の息子の将来を案じる老いた母親を演じるヒューマンドラマ。地域社会から孤立し、息子と二人きりで生きてきた母親が、息子の自立を模索する。お笑い芸人で『間宮兄弟』などの俳優としても活動する塚地武雅が息子を演じるほか、渡辺いっけいや森口瑤子、斎藤汰鷹、林家正蔵、高島礼子などが共演。監督を『禁忌』などの和島香太郎が務める。
あらすじ
占い師の山田珠子(加賀まりこ)は自閉症の息子・忠男(塚地武雅)と二人で暮らしていたが、ある日、忠男の通う作業所で知的障害者のためのグループホームへの入居を勧められる。珠子は自分の死後の忠男の人生を考え、忠男の入居を決める。しかし、環境の変化に戸惑った忠男は、ホームを抜け出した際に、ある事件に巻き込まれてしまう。
監督 | 中江和仁 |
評価 | 4.55 |
解説
映画化もされた「大奥」などで知られるよしながふみの漫画を原作に、同性カップルの暮らしを日々の食を通じて描くドラマシリーズの劇場版。料理上手で倹約家の弁護士と恋人の美容師が営む、穏やかな日常を揺るがす騒動が巻き起こる。ドラマ版に続き監督を中江和仁、脚本を安達奈緒子が担当。カップルを演じる西島秀俊と内野聖陽をはじめ、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツらおなじみの面々が集結し、劇場版新キャストとして『ライアー×ライアー』などの松村北斗が出演する。
あらすじ
小さな法律事務所で働く弁護士・筧史朗(西島秀俊) は、同居する恋人の美容師・矢吹賢二(内野聖陽)の誕生日プレゼントとして京都旅行を提案。賢二は大喜びで旅を満喫するが、旅行中のある出来事をきっかけに、二人は互いに本心を明かせなくなってしまう。そんな中、仕事帰りの史朗は見知らぬイケメン(松村北斗)と賢二が親密な様子で歩いているのを目撃。動揺する史朗は、賢二にその青年のことを聞くことができず悶々とする。
監督 | 谷口正晃 |
評価 | 4.28 |
解説
映画化もされた『神童』『マエストロ!』などで知られる、さそうあきらの漫画を原作にした音楽ドラマ。芸術大学に進んだ青年が、人々との交流を通して自身の音楽を作り上げていく。メガホンを取るのは『父のこころ』などの谷口正晃。『ザ・ファブル』シリーズなどの井之脇海、『酔うと化け物になる父がつらい』などの松本穂香、NHKの連続テレビ小説「エール」などの山崎育三郎らが出演する。
あらすじ
京都の芸術大学に入学した漆原朔(井之脇海)。無理やり現代音楽研究会へと引き込まれた彼は、そこに異母兄の貴志野大成(山崎育三郎)とその恋人・小夜が所属しているのを知る。自分を音楽から遠ざけるきっかけになった存在である上に、天才作曲家として注目される大成を前にざわついた感情を抱く朔。しかし、幼いころから目にする色や物の形を脳内で音に変換させてきた彼は、それらを音楽にできることに気づく。そして、同じ感覚で自然界の音を捉える浪花凪(松本穂香)と出会う。
監督 | 前田哲 |
評価 | 4.02 |
解説
老後の資金を貯めてきた主婦が直面する悩みをつづった垣谷美雨の小説を映画化。老後は安泰だと考えていた主人公が、さまざまな問題に振り回される。主演はドラマシリーズ「緊急取調室」などの天海祐希。『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』などの前田哲がメガホンを取り、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』などの斉藤ひろしが脚本を手掛けた。
あらすじ
節約がモットーの主婦・後藤篤子(天海祐希)は、夫の給料や自身のパート代をやり繰りして老後の資金を貯めてきた。ある日、しゅうとが他界し400万円近い葬儀代が必要になるが、自身のパートの契約が更新されず、さらに娘の結婚が決まって多額の出費に頭を抱える中、夫の会社が倒産してしまう。そして成り行きで同居することになったしゅうとめは、金遣いが荒かった。
監督 | リーズル・トミー |
評価 | 3.89 |
解説
「ソウルの女王」と称されるアレサ・フランクリンの半生を描く伝記ドラマ。世界的なスターへと上り詰め華やかな活躍を見せる一方、私生活では苦悩の多かった彼女の姿が描かれる。監督はドラマ「ウォーキング・デッド」などに携わってきたリーズル・トミー。アレサを『ドリームガールズ』などのジェニファー・ハドソンが演じ、数々の名曲を熱唱する。そのほかオスカー俳優フォレスト・ウィテカー、『最凶赤ちゃん計画』などのマーロン・ウェイアンズ、『ボディカメラ』などのメアリー・J・ブライジらが共演。
あらすじ
子供のころから圧倒的な歌唱力で天才と称され、ショービズ界の華として喝采を浴びるアレサ・フランクリン(ジェニファー・ハドソン)。しかし輝かしい活躍の裏では、尊敬する父(フォレスト・ウィテカー)や愛する夫(マーロン・ウェイアンズ)の束縛や裏切りに苦しんでいた。ぎりぎりまで追い詰められた彼女は、全てを捨て自分の力で生きていこうと決断する。やがてアレサの心の叫びを込めた歌声は世界を熱狂させ、彼女自身も自らへの“リスペクト”を取り戻す。
監督 | ジェーン・カンピオン |
評価 | 4.00 |
解説
[Netflix作品]『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩(うた)~』などのジェーン・カンピオンが監督を務めたドラマ。冷酷な牧場主が、ある女性をめぐって弟に激しい憎しみを抱く。『クーリエ:最高機密の運び屋』などのベネディクト・カンバーバッチ、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』などのキルステン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィーらが出演する。
あらすじ
1920年代のアメリカ・モンタナ州。周囲の人々に畏怖されている大牧場主のフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)は、夫を亡くしたローズ(キルステン・ダンスト)とその息子ピーター(コディ・スミット=マクフィー)と出会う。ローズに心を奪われるフィルだったが、弟のジョージ(ジェシー・プレモンス)が彼女と心を通わせるようになって結婚してしまう。二人の結婚に納得できないフィルは弟夫婦に対して残忍な仕打ちを執拗(しつよう)に続けるが、ある事件を機に彼の胸中に変化が訪れる。
監督 | 前田哲 |
評価 | 3.90 |
解説
第16回本屋大賞で大賞を受賞した、瀬尾まいこの小説を原作にしたドラマ。血のつながらない親のもとで育った女性と、まな娘を残して失踪した女性の運命が意外な形で交錯していく。『老後の資金がありません!』などの前田哲がメガホンを取り、『いぬやしき』などの橋本裕志が脚本を担当。『君は月夜に光り輝く』などの永野芽郁、『mellow メロウ』などの田中圭、『忍びの国』などの石原さとみをはじめ、岡田健史、大森南朋、市村正親らが出演している。
あらすじ
血のつながらない親たちをたらい回しにさせられ、名字を4回も変えた森宮優子(永野芽郁)。いまは義父・森宮さん(田中圭)と二人暮らしをする彼女は、不安ばかりな将来のこと、うまくいかない恋や友人たちとの関係に悩みながら、卒業式で弾く「旅立ちの日に」のピアノの特訓に打ち込んでいた。やがて彼女の人生と運命は、かつて深い愛情を注いでいた娘みぃたんを残して姿を消した女性・梨花(石原さとみ)と不思議な形でつながる。
監督 | ふくだももこ |
評価 | 3.57 |
解説
『渋谷区円山町』の原作などで知られる漫画家・おかざき真里が、作家・雨宮まみのエッセイを原案に女性たちが抱える不安や希望を描いたコミックを映画化。30代独身の人気作家が、自分らしい幸せの形を模索する。監督を『おいしい家族』『君が世界のはじまり』などのふくだももこ、脚本を『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』などの坪田文が担当。ヒロインを『マスカレード・ナイト』などの田中みな実が演じる。
あらすじ
10年前に発表したエッセイが思わぬヒットとなり、一躍有名作家なった本田まみ(田中みな実)。生きづらい女性たちの本音を代弁し読者の支持を集めてきたが、近ごろはヒット作を書けず作家活動は迷走気味だった。さらに36歳で独身であることを周囲から「一人でかわいそう」と心配され、結婚を前提に交際している年下の恋人とはすれ違いも多い。キャリアや今の暮らしに不満はないものの、まみは「ずっと独身でいるつもり?」という周囲からの「雑音」に揺れ動く。
監督 | 森義仁 |
評価 | 3.62 |
解説
[Netflix作品]作家などとして活動する燃え殻の小説を原作に、ドラマ「恋のツキ」などの森義仁が監督を務めたドラマ。普通とは違う人物を目指すものの何者にもなれなかった男性が、25年という月日を振り返る。『アンダードッグ』シリーズなどの森山未來、『タイトル、拒絶』などの伊藤沙莉、『草の響き』などの東出昌大、『TOURISM』などのSUMIREのほか、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人らが出演する。
あらすじ
1995年。佐藤(森山未來)は、文通相手のかおりと原宿のカフェで会う。「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」と言われ、普通じゃない自分を目指していた佐藤は、その言葉を支えにテレビの美術制作会社で懸命に働きながら小説家を目指す。その後かおりが去り、小説家にもなれなかった彼は、テレビ業界の片隅で働き続けていた。バーテンダーのスー(SUMIRE)との出会い、恋人の恵(大島優子)との別れなどを経て、気が付けば佐藤は46歳になっていた。
監督 | ヴァディム・シメリョフ |
評価 | 3.57 |
解説
第2次世界大戦でナチス・ドイツ軍によるモスクワ陥落を阻止したソ連軍士官候補生たちの戦いを、当時の兵器などを使って壮大なスケールで描いた戦争アクション。1941年、首都モスクワに迫るナチス・ドイツ軍に対し、戦場を初めて体験する若者たち約3,500名が立ち向かう。監督を務めるのは『ミッション・イン・モスクワ』などのヴァディム・シメリョフ。アルチョム・グビン、リュボフ・コンスタンティノワ、イゴール・ユディン、アレクセイ・バルドゥコフなどが出演する。
あらすじ
1941年10月、ソ連の首都モスクワ近郊のイリンスコエ防衛ライン。ナチス・ドイツの大軍がモスクワを目指して進撃する中、兵力不足に陥っていたソ連軍は、学生兵や看護師などおよそ3,500名の若者たちを前線に送り込む。士官候補生のラヴロフらは必死に戦うが、仲間たちが次々にナチス・ドイツ軍の猛攻撃の犠牲になっていく。
監督 | 樋口真嗣 |
評価 | 2.71 |
解説
小松左京の同名ベストセラー小説を映画化した1973年作品『日本沈没』を、『ローレライ』で長編監督デビューを果たした樋口真嗣が現代にリメイクした衝撃作。SMAPの草なぎ剛と柴咲コウがダブル主演し、未曾有の災害に立ち向かうヒロイックなキャラクターを熱演する。防衛庁や東京消防庁の全面的な撮影協力と日本を代表する特撮スタッフが生み出した臨場感あふれる本格的スペクタクル映像の数々は、日本映画史に名を残すほどの完成度を誇る。
あらすじ
大規模な地殻変動によって日本列島が海中に沈没するという危険性が指摘され、それを証明するかのようなマグニチュード8以上の大地震が次々と発生する。そんな中、大地震の被害にあった潜水艇のパイロット小野寺(草なぎ剛)と幼い少女美咲(福田麻由子)は、ハイパーレスキュー隊員の阿部(柴咲コウ)に救出される。
映画レポート
1973年のオリジナル版は、高度成長を終えて閉塞する時代の終末観を決定づける国民的大作だった。自然災害で国土を失い、流浪の民となる日本民族を生き延びさせようと奮闘する政治家や科学者の情念は、噴き出る溶岩に拮抗するほど熱かった。重厚な群像劇が、科学的説得力に裏打ちされた崩壊の地獄絵に勝っていたのだ。
大震災やテロの悲劇に打ちひしがれ、秩序さえも失われ、あらゆる意味で日本が壊れてしまった今、リメイク版は為政者が早々と犠牲者になり、国家の舵取りさえ覚束なくなる展開はリアルだ。精緻な特撮はハリウッドに引けをとらない。しかし「衝撃のディザスター」と「感動を狙ったドラマ」という2つの画づらは一向に交わっていかない。
これは虚無の時代に希望を灯す心象風景を目指したのに、滅亡願望に後ろ髪を引かれた、煮え切らぬ偽りのスペクタクルだ。興行的要請から客層を意識しすぎたことが敗因か。「ローレライ」で虚構の世代の総括を試みた監督が目指すべきは、「海猿」的な大量消費型商品の製造マンでも、「ALWAYS 三丁目の夕日」的な本編も撮れる画像処理マンでもないはずだ。樋口真嗣よ、同世代が共有する感情を視覚的大作に昇華できる作家になってくれ! (清水節)
監督 | 真利子哲也 |
評価 | 2.76 |
解説
『イエローキッド』『NINIFUNI』などの真利子哲也監督が手掛けた若者による群像劇。『桐島、部活やめるってよ』などの喜安浩平が共同で脚本を手掛け、愛媛県松山を舞台に、若者たちの欲望と狂気を描く。暴力にとりつかれた主人公には『ゆるせない、逢いたい』などの柳楽優弥がふんし、ほとんどセリフのない難役を演じ切る。さらに『共喰い』などの菅田将暉、『渇き。』などの小松菜奈、『2つ目の窓』などの村上虹郎らが出演。
あらすじ
愛媛県のこぢんまりとした港町・三津浜の造船所に2人で生活している芦原泰良(柳楽優弥)と弟の将太(村上虹郎)。けんかばかりしている泰良はある日突然三津浜を後にし、松山の中心街で相手を見つけてはけんかを吹っ掛けていく。そんな彼に興味を抱いた北原裕也(菅田将暉)が近づき、通行人に無差別に暴行を働いた彼らは、奪った車に乗り合わせていた少女・那奈(小松菜奈)と一緒に松山市外へ向かい……。
映画レポート
「誰も知らない」から12年。柳楽優弥が覚醒した。
すでに、オンエア中のドラマ「ゆとりですがなにか」に出演中の彼が、「おっぱい」というポップなワードやコミカルな芝居を通して、お茶の間に向けてただならぬノイズを鳴らしていることに感づいている人は少なくないだろう。そのタイミングで公開される主演作「ディストラクション・ベイビーズ」で柳楽が演じる泰良は、一言で言えばアウトロー、いや、モンスターだ。
舞台は愛媛県松山市。前半は、18歳の泰良がヤクザだろうが誰かれ構わずケンカを売り、ストリートファイトに明け暮れる日々が描かれる。世間のルールは通じず、どんなにダメージを与えてもニヤニヤと笑い、ゆらゆらと立ち上がり、何度でも襲い掛かっていく泰良は、まるでホラー映画の殺人クリーチャーやゾンビに匹敵するモンスター。標的をロックオンして不自然なスピードで距離を詰めていく姿は、2015年の傑作ホラー映画「イット・フォローズ」の「イット」を彷彿とさせる不気味さ。特殊メイクもせずCGも使っていないのに、人でない者を体現する柳楽優弥は、モンスター級の俳優として覚醒したのだ。
モンスターが何を見て何を考えているのかは、誰にもわかるはずがない。だからこの映画には、一度も泰良の視点からのショットはない。そして、カットを割らずに泰良のケンカを遠巻きに撮り続ける映像と、泰良の「楽しければええけん」という台詞に、泰良のケンカを野次馬として楽しんでいたことに気付かされ、見ている側は居心地が悪くなる。
真利子哲也監督は、「イエローキッド」や「NINIFUNI」でその才能に熱い視線が注がれていたからこそ、柳楽をはじめ、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮、三浦誠己、でんでんといった強力な布陣のキャスティングが成功した。彼らのメジャー感と演技力を借りながら、過去作がはらむ不穏さや先鋭性をさらにむき出しにした本作は、いい意味でもっとも見やすく、観客を選ばない。真利子監督のキャリア最高傑作であると同時に、日本映画の現在地点を示す。
ちなみに後半は、泰良と、その強さに目をつけた18歳の高校生・裕也(菅田)との暴走が描かれる。モンスターの威を借る裕也の小者&クズっぷりが、史上稀に見る仕上がりだということも付け加えておきたい。(須永貴子)
監督 | 瀬々敬久 |
評価 | 3.90 |
解説
映像化もされた「さよならドビュッシー」などの中山七里の小説を原作にしたミステリードラマ。宮城県で発生した連続殺人事件の容疑者となった青年と、彼を追う刑事の姿から日本社会が抱える格差の実態を浮き彫りにする。監督は『楽園』などの瀬々敬久。『るろうに剣心』シリーズなどの佐藤健、『のみとり侍』などの阿部寛のほか、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都らが出演する。
あらすじ
東日本大震災から9年が経った宮城県の都市部で、被害者の全身を縛った状態で放置して餓死させるむごたらしい連続殺人事件が起こる。容疑者として捜査線上に浮かんだのは、知人を助けるために放火と傷害事件を起こし、刑期を終えて出所したばかりの利根(佐藤健)。被害者二人からある共通項を見つけ出した宮城県警の刑事・笘篠(阿部寛)は、それをもとに利根を追い詰めていく。やがて、被害者たちが餓死させられることになった驚くべき事件の真相が明らかになる。
監督 | 瀬々敬久 |
評価 | 3.66 |
解説
中島みゆきの楽曲「糸」を基に描くラブストーリー。『アルキメデスの大戦』などの菅田将暉と『さよならくちびる』などの小松菜奈が主演し、日本やシンガポールを舞台に、平成元年生まれの男女の18年を映し出す。『ヘヴンズ ストーリー』などの瀬々敬久が監督を務める。『スマホを落としただけなのに』などの平野隆が原案と企画プロデュース、『永遠の0』などの林民夫が脚本を担当した。
あらすじ
北海道で暮らす13歳の高橋漣(菅田将暉)と園田葵(小松菜奈)は、互いに初めての恋に落ちるが、ある日突然葵の行方がわからなくなる。彼女が養父の虐待から逃れるために町を出たことを知った漣は、夢中で葵を捜し出し駆け落ちしようとする。だがすぐに警察に保護され、葵は母親と一緒に北海道から出て行ってしまう。それから8年、漣は地元のチーズ工房に勤務していた。
監督 | ケヴィン・マクドナルド |
評価 | 4.13 |
解説
モハメドゥ・ウルド・スラヒの著書を原作に描く社会派ドラマ。弁護士たちが、アメリカ軍のグアンタナモ基地で何年も投獄生活を送るモーリタニア人青年の弁護を引き受ける。『ブラック・シー』などのケヴィン・マクドナルドが監督を手掛け、『フライトプラン』などのジョディ・フォスター、『ダイバージェント』シリーズなどのシェイリーン・ウッドリー、『エジソンズ・ゲーム』などのベネディクト・カンバーバッチらが弁護士を演じている。
あらすじ
モーリタニア人のモハメドゥ(タハール・ラヒム)は、アメリカ同時多発テロの容疑者として、キューバにあるアメリカ軍のグアンタナモ基地に収容されていた。彼の弁護を引き受けた弁護士のナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)とテリー・ダンカン(シェイリーン・ウッドリー)は、真相解明のため調査を開始する。彼らに相対するのは、軍の弁護士であるステュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)だった。
監督 | マッテオ・ガローネ |
評価 | 3.47 |
解説
カルロ・コロディが執筆したイタリアの児童文学「ピノッキオの冒険」を実写映画化したダークファンタジー。父親であるジェペットじいさんの家を飛び出しておとぎの森へと誘われたピノッキオが、不思議な生き物たちに遭遇しながら冒険を繰り広げる。監督と共同脚本を手掛けるのは『ドッグマン』などのマッテオ・ガローネ。ピノッキオ役のフェデリコ・エラピをはじめ、『ライフ・イズ・ビューティフル』などのロベルト・ベニーニ、『17歳』などのマリーヌ・ヴァクトらが出演する。
あらすじ
貧しい木工職人のジェペットじいさん(ロベルト・ベニーニ)が丸太から作った人形が、ある日突然しゃべり始める。ピノッキオ(フェデリコ・エラピ)と名付けられた人形は、ジェペットじいさんの家を飛び出し、森の奥深くへと分け入っていく。ピノッキオは優しい妖精の言いつけに背き、おしゃべりコオロギの忠告を尻目に、人間の子供になりたいという願いを胸に冒険を続けていく。
監督 | カウテール・ベン・ハニア |
評価 | 3.88 |
解説
自由を求めて自らがアート作品となる契約を交わした男の運命を描き、第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた人間ドラマ。チュニジアのカウテール・ベン・ハニア監督が、理不尽な世界のありようをあぶり出す。主演のヤヤ・マヘイニは本作で第77回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で最優秀男優賞を獲得。そのほか『Uボート:235 潜水艦強奪作戦』などのケーン・デ・ボーウ、『オン・ザ・ミルキー・ロード』などのモニカ・ベルッチらが出演する。
あらすじ
難民の男性サム(ヤヤ・マヘイニ)は、偶然出会った現代アートの巨匠から意外なオファーを持ちかけられる。それは大金と自由を手に入れる代わりに、背中にタトゥーを施し彼自身がアート作品になるというものだった。展覧会の度に世界を行き来できると考えた彼は、国境を越え離れ離れになっていた恋人に会うためオファーを受ける。アート作品として美術館に展示され、高額で取引される身となったサムは、やがて精神に異常をきたし始める。
監督 | 首藤凜 |
評価 | 3.76 |
解説
芥川賞作家・綿矢りさの小説を原作にしたラブロマンス。校内の人気者で優等生の女子高校生、彼女が思いを寄せる同級生、その同級生と密かに交際する病身の女子生徒が織り成す恋模様を描く。メガホンを取るのは『21世紀の女の子』などの首藤凜。『樹海村』などの山田杏奈、ドラマ「DIVE!!」などの作間龍斗、『ソワレ』などの芋生悠のほか、山本浩司、板谷由夏、田中美佐子、萩原聖人らが出演する。
あらすじ
成績優秀で明朗快活な高校3年生の木村愛(山田杏奈)。校内きっての人気者である彼女は、地味で寡黙でありながらも聡明さと謎めいた雰囲気を漂わせる同級生の西村たとえ(作間龍斗)に惹(ひ)かれていた。そんな折、彼が大事そうに手紙を読んでいるのを見かけ、愛はそれを盗み読みしてしまう。手紙を差し出したのは、糖尿病の持病を抱える地味な新藤美雪(芋生悠)だった。二人が交際しているのを知って、言いようの感情に駆られる愛。彼女はたとえへの恋心を隠し、美雪に近づいていく。
監督 | 小泉堯史 |
評価 | 3.72 |
解説
50万部を超えるベストセラー小説を原作に、『雨あがる』『阿弥陀堂だより』の小泉堯史監督が映画化した感動のヒューマンドラマ。交通事故で記憶が80分しか続かない天才数学者の主人公を、小泉監督と3度目のコンビとなる寺尾聰が静かに力強く熱演。彼の世話をする家政婦に深津絵里、彼女の10歳の息子に子役の齋藤隆成。家族にも似た関係性の中で人を愛することの尊さを問いかける。彼らの心の機微を美しく切り取る映像美も味わい深い。
あらすじ
元大学教授の数学者(寺尾聰)の家に派遣された家政婦の杏子(深津絵里)は、彼が交通事故の後遺症で80分しか記憶がもたないことを告げられる。戸惑う杏子だが、ある日、彼女の息子(齋藤隆成)と数学者が会い……。
映画レポート
とかく映画の中の数学者は、奇行ばかりが強調されがちだ。数式に対峙して内向する姿を表現する困難からくる、苦し紛れの演出でもあるのだろう。ここに描かれる数学者(寺尾聰)は、事故で記憶を80分しか保持できない。静かな格闘は行き詰る前にリセットされ、絶妙な設定と寺尾の枯れたキャラから際立つのは、数学の美しさに取り憑かれた純化した魂である。
その魂に魅せられたシングルマザーの家政婦(深津絵里)と10歳の子供。自然界の法則を数式で表わす真理への心酔という絆で結ばれた、友情よりも、擬似家族よりも強固な関係性。原作を改変し、この子が成長した姿である数学教師(吉岡秀隆)が、生徒たちに向かって素晴らしき人物の逸話を話して聞かせる構成が活きている。吉岡の誠実な個性を形成した、括弧に括られた過去。それは「潔さ」や「清明」といった言葉に象徴される、こんな時代に忘却された価値観を尊重する心に明確な輪郭を与える。
読む者に居住まいを正させるような原作者・小川洋子の凛とした文章は、小泉堯史の風格と品性を伴う演出によって見事に映像に転換された。泣ける映画や愛の物語などと呼ばないでほしい。これは、ただただ純粋に美しい映画である。
監督 | 滝田洋二郎 |
評価 | 4.25 |
解説
ひょんなことから遺体を棺に納める“納棺師”となった男が、仕事を通して触れた人間模様や上司の影響を受けながら成長していく姿を描いた感動作。監督には『壬生義士伝』の滝田洋二郎があたり、人気放送作家の小山薫堂が初の映画脚本に挑戦。一見近寄りがたい職業、納棺師に焦点を当て、重くなりがちなテーマを軽快なタッチでつづる。キャストには本木雅弘、広末涼子、山崎努ら実力派がそろい、主演の本木がみせる見事な納棺技術に注目。
あらすじ
楽団の解散でチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷の山形に帰ってきた大悟(本木雅弘)は好条件の求人広告を見つける。面接に向かうと社長の佐々木(山崎努)に即採用されるが、業務内容は遺体を棺に収める仕事。当初は戸惑っていた大悟だったが、さまざまな境遇の別れと向き合ううちに、納棺師の仕事に誇りを見いだしてゆく。
映画レポート
本木雅弘演じる主人公の“納棺師”が死に化粧と納棺の儀式を行う。死に装束の着物の衣ずれの音まで耳に心地よく響く。彼の所作ひとつひとつが指先まで神経が行き届いて、(ポーラ伝統文化振興財団の)記録映画でよく見る“匠の仕事”、美学の極致にまで達している。男の前の職業が指先が器用なチョロ奏者だという仕掛けが効いている。
滝田洋二郎監督と脚本家の小山薫堂がつむぎ出す物語は、死の儀式を執り行う主人公の周りからの“けがれの職業”だという意識をむき出しにする。やがてその儀式なしに、故人との別れは成り立たないことを訴える。最初はショックを受ける広末涼子演じる妻さえも、儀式の凄みに刮目せざるをえなくなる。
納棺師の先輩役の山崎努がフグの白子焼きを、伊丹十三映画のように美味そうに食べるシーンがある。食べることも人間の営みのひとつで、生き物の“死”に始末をつける行為であることをグロテスクなまでに見せつけるのが興味深い。人間は生き物の“死”の上にしか“生”を享受できない。なかなか深い。
この納棺師のひたすら美しい死の儀式は、一度でも親しい者を出棺した過去がある御仁なら、涙なくして見られないだろう。藤沢周平文学でおなじみの山形・庄内地方の移り変わる四季の自然が表情豊かで、美しい映画だ。(佐藤睦雄)
ホットトピックス
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