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監督 | ダグ・リーマン |
評価 | 3.39 |
解説
男性は考えや思いが“ノイズ”としてさらけ出され、女性は死に絶える星を舞台とした、パトリック・ネスの小説を原作にしたSFアドベンチャー。不思議な星で生まれ育った青年が地球からやってきた女性と出会い、彼女を守ろうと逃避行を繰り広げる。出演は『スパイダーマン』シリーズのトム・ホランドや、『スター・ウォーズ』シリーズのデイジー・リドリー、マッツ・ミケルセン、デミアン・ビチルら。監督を『ボーン・アイデンティティー』などのダグ・リーマンが務める。
あらすじ
汚染した地球を発った人類がたどり着いた新天地“ニュー・ワールド”は、男性は考えや思いが“ノイズ”として現れ、女性は死に絶える不思議な星だった。その星で生まれ育ったトッド(トム・ホランド)は一度も女性を見たことがなかったが、あるとき地球から来た宇宙船が墜落し、生存者のヴァイオラ(デイジー・リドリー)と出会う。トッドはヴァイオラを捕らえようとする者から彼女を守ろうと決断する。
監督 | 河野亜矢子 |
評価 | 3.98 |
解説
アニメやゲームなどさまざまな形で展開されている『ソードアート・オンライン』シリーズで、原作者の川原礫自らリブートした小説をアニメ映画化。同シリーズの原点であるデスゲームの舞台「アインクラッド」攻略の軌跡を、ゲームに巻き込まれた少女の視点で描く。制作は過去作から引き続きA-1 Pictures、監督は河野亜矢子、キャラクターデザイン・総作画監督は戸谷賢都が担当。ボイスキャストは松岡禎丞、戸松遥が続投し、原作には登場しない新キャラクターを水瀬いのりが務める。
あらすじ
次世代オンラインゲーム「ソードアート・オンライン」が始動し大勢のプレーヤーが参加するが、彼らはゲームマスターによって仮想空間に閉じ込められてしまう。さらにゲームをクリアするまでログアウトはできず、ゲーム内での死は現実の死を意味することを告げられる。ネットゲームとは無縁だった少女・アスナは生き残りを懸け、舞台となる鋼鉄の浮遊城「アインクラッド」の攻略に動き出す。極限の状況下で、彼女は孤高の剣士・キリトと出会う。
監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
評価 | 3.77 |
解説
『スター・ウォーズ』シリーズなど数多くのSF作品に影響を与えたというフランク・ハーバートの小説を、『ブレードランナー 2049』などのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。宇宙を支配する力を持つ秘薬の生産地で、デューンと呼ばれる惑星を舞台に繰り広げられる覇権争いを描く。主人公を『君の名前で僕を呼んで』などのティモシー・シャラメが演じ、『ライフ』などのレベッカ・ファーガソン、『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』などのオスカー・アイザックのほか、ジョシュ・ブローリン、ハビエル・バルデムらが共演する。
あらすじ
人類が地球以外の惑星に移り住み宇宙帝国を築いた未来。皇帝の命により、抗老化作用のある秘薬「メランジ」が生産される砂の惑星デューンを統治することになったレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティモシー・シャラメ)と共にデューンに乗り込む。しかし、メランジの採掘権を持つ宿敵ハルコンネン家と皇帝がたくらむ陰謀により、アトレイデス公爵は殺害されてしまう。逃げ延びたポールは原住民フレメンの中に身を隠し、やがて帝国に対して革命を決意する。
監督 | ジェイムズ・サミュエル |
評価 | 4.00 |
解説
[Netflix作品]ラッパーのジェイ・Zがプロデューサーに名を連ね、ヒップホップを背景に復讐(ふくしゅう)を果たそうとする主人公を描く西部劇。両親を殺した悪党へのリベンジを決意した荒くれ者の男が、個性的な仲間たちと共に強敵を相手に銃撃戦を繰り広げる。主人公を『ザ・ファイブ・ブラッズ』などのジョナサン・メジャース、敵を『マンデラ 自由への長い道』などのイドリス・エルバが演じるほか、レイキース・スタンフィールド、レジーナ・キングなどが共演。監督をジェームズ・サミュエルが務める。
あらすじ
荒くれ者のナット・ラヴ(ジョナサン・メジャース)は20年前に両親を殺害した悪党のボス、ルーファス・バック(イドリス・エルバ)が刑務所から釈放されることを知る。荒野の強者たちを引き連れたルーファスに復讐(ふくしゅう)すべく、ナットは元恋人のメアリー(ザジー・ビーツ)らくせ者たちと共に最強の敵に挑む。
監督 | キャリー・ジョージ・フクナガ |
評価 | 4.05 |
解説
イギリスの敏腕諜報(ちょうほう)員ジェームズ・ボンドの活躍を描く人気シリーズの第25弾。諜報(ちょうほう)の世界から離れていたボンドが、再び過酷なミッションに挑む。メガホンを取るのはドラマ「TRUE DETECTIVE」シリーズなどのキャリー・フクナガ。ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリスらおなじみの面々が出演し、新たに『ボヘミアン・ラプソディ』などのラミ・マレックらが参加する。
あらすじ
諜報(ちょうほう)員の仕事から離れて、リタイア後の生活の場をジャマイカに移した007ことジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、平穏な毎日を過ごしていた。ある日、旧友のCIAエージェント、フェリックス・ライターが訪ねてくる。彼から誘拐された科学者の救出を頼まれたボンドは、そのミッションを引き受ける。
監督 | ルーベン・フライシャー |
評価 | 3.66 |
解説
マーベルコミックスに登場するキャラクター、ヴェノムが主人公のアクション。地球外生命体に寄生されたのを機に、特別な力を身につけたジャーナリストの戦いが描かれる。メガホンを取るのは『L.A. ギャング ストーリー』などのルーベン・フライシャー。『レヴェナント:蘇えりし者』などのトム・ハーディ、『ブルーバレンタイン』などのミシェル・ウィリアムズらが出演する。
あらすじ
ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、ライフ財団が人体実験を行っており、死者が出ているといううわさを聞きつける。正義感にかられ、真相を突き止めようと調査を始めた彼は被験者と接触したために、地球外生命体のシンビオートに寄生される。
映画レポート
誤解を恐れずに言うならば、トム・ハーディはその爆発的な存在感ゆえ、ある種のリミッターを必要とする俳優である。その証拠に「ダークナイト・ライジング」(12)では顔面マスクを装着し、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(15)では特殊車両の先端に縛り付けられ、「レジェンド 狂気の美学」(15)では心身を分裂させるかのように双子のギャングを演じてきた。そうやってオーラを抑え込むことで初めて我々はその魅力を直に受け止められるのだ。
そんな規格外の彼が今回挑むのは、恐れ知らずのハートを胸に世界中を飛び回るフリーのジャーナリストだ。しかし取材の過程で巨大企業の特殊ラボに忍び込んだところ、突如、得体の知れない流動体が体に付着し、侵食をはじめ……。いつしか自分とは違う別の人格が身を引き裂かんばかりにこう叫ぶ。「俺の名はヴェノム!」。かくして凶暴すぎるモンスターが主役となったまったく新しい物語が幕を開けることに。
これはてっきりダークでバイオレントな方向性に振り切れるのだろうと、誰もが思うはずだ。しかしそこからの展開はことのほか小気味よく、VFXを駆使した映像も相まって、我々の意表を突いてくる。
そもそもこの「1つの肉体に2つの個性が同居する」様がなんとも言えない可笑しさで一杯だ。腹が減ると人間を食いたくなるヴェノムの厄介な性格をなだめ、うまいこと説得しながらピンチを切り抜けるハーディの演技も実にお見事。挙げ句の果てには二人のコンビネーションがうまく回転し、本作は各々が長所を生かし欠点を補いあった極上のバディ・ムービーへと進化を遂げていく。ここまでくるともうなんだかヴェノムが意外と“イイ奴”に思えたりもするから不思議なものだ。
聞くところによると、体内に響くヴェノムの重低音ボイスも、実はハーディ自身が声をあてているのだとか。結果、またしても彼の身から溢れるオーラを彼自身の力で制御する怪作となった感は強いが、ファンにとってはそこが嬉しいポイントだろう。ヴェノムとハーディ、二人のバケモノの規格外の魅力を存分に楽しみたい。(牛津厚信)
監督 | リチャード・フライシャー |
評価 | 3.06 |
解説
偉大なる力を秘めた魔神“ダゴスの角”を求めて冒険の旅に出るコナンたちを描いた、「コナン・ザ・グレート」に次ぐシリーズ第2弾。
監督 | デスティン・ダニエル・クレットン |
評価 | 3.82 |
解説
『アベンジャーズ』シリーズなどを手掛けるマーベル・スタジオによるヒーローアクション。悪の組織を率いる父親の恐ろしい計画に巻き込まれていく主人公の姿を描く。『黒い司法 0%からの奇跡』などのデスティン・ダニエル・クレットンがメガホンを取る。シム・リウが主人公、『インファナル・アフェア』シリーズなどのトニー・レオンが父親を演じ、『クレイジー・リッチ!』などのミシェル・ヨー、『フェアウェル』などのオークワフィナらが共演する。
あらすじ
犯罪組織を率いる父親(トニー・レオン)に幼いころから鍛え上げられ、最強の力を持ったシャン・チー(シム・リウ)は、組織の後継者とみなされていた。だが、彼は自らの力を封印し、過去の自分と決別してサンフランシスコでホテルマンとして平凡に暮らそうとする。だが、伝説の腕輪"テン・リングス"を操る父親が世界を恐怖に陥れようとしたため、シャン・チーはついに封印していた力を解き放つ。
監督 | アダム・ウィンガード |
評価 | 3.56 |
解説
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に続く“モンスター・ヴァース”シリーズ第4弾となるアクションアドベンチャー。モンスターの戦いで甚大な被害を受けた地球にゴジラが再び出現し、人類はキングコングに戦わせようとする。メガホンを取ったのは『サプライズ』『Death Note/デスノート』などのアダム・ウィンガード。『ターザン:REBORN』などのアレキサンダー・スカルスガルドや前作にも出演したミリー・ボビー・ブラウンやカイル・チャンドラーなどのほか、日本からは小栗旬らが出演する。
あらすじ
モンスターたちの戦いの後、特務機関モナークが巨大怪獣(タイタン)の故郷(ルーツ)の手掛かりを探る中、深海からゴジラが再び現れる。世界の危機を前にゴジラが暴れまわる原因を見いだせない人類は、キングコングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出し、ゴジラと対決させようとする。
映画レポート
レジェンダリーによるゴジラ3作目は、2017年公開の「キングコング:髑髏島の巨神」と融合を成し、コングとの怪獣王を争うドリームマッチを実現させた。本家・東宝のシリーズでも「キングコング対ゴジラ」(62)というタイトルで顔合わせをしているが、リメイクとまでは行かずとも、人間が私利私欲で怪獣を手札にし、モンスター狂騒曲を鳴り響かせる作劇を受け継いでいる。
生態系の破壊者キングギドラを倒したゴジラは、タイタン(怪獣たちの呼称)の勝ち残りとして秘密機関モナークの監視下にあった。だがある日、再び人類の前に姿をあらわし、人工頭脳開発企業エイペックスの施設を襲撃する。理由は人類が生態系を乱そうとするのを察したからだ。いっぽう同じモナークに見張られていた髑髏島のコングも、新たな動きを見せる。タイタンの驚異的存在の源に迫ろうとするエイペックスと科学者チームが、彼を島の外に出し、生誕の地へ案内させようとするのだ。
かくして始まるコング輸送作戦。映画はこうした流れを、過去2作にはないハイテンポな編集でさばいていく。そして移動中の洋上で遂に両巨獣は接触し、映画史上最も激しいモンスターバトルへと一気になだれ込む。光線や飛行能力を駆使するギドラやラドン、モスラと違い、コングはステゴロ(素手喧嘩)のファイターだ。「眼前に立つ奴はひとまず殴る」のジャイアン主義で、ゴジラの顔面やボディに容赦ないパンチをあびせる。ゴジラも尾をしならせ倍返しで応酬。これがオレ様の流儀だ、返礼だと言わんばかりに!!
カメラも激闘を逃すまいと対象にグイグイ迫り、衝撃を食らって構図が乱れるといった、新鮮な映像スタイルを展開していく。そして彼らを脅かす第三者の介入など物語は波乱を起こすのだが、戦いの派手さに応じて都市破壊も大規模化。クライマックスの約30分間にわたる戦いづくめの展開は、必ずや怪獣映画ジャンキーたちを昇天へといざなうだろう。個人的にはゴジラの特徴的な背びれを活かした、前半部での「ジョーズ」(75)を思わす海戦演出に唸った。事実、今回はゴジラの背びれが重要なキーとなるので、その布石としてパワフルな印象を残すのだ。本作でレジェンダリーのゴジラはひとつの節目を迎えるが、いや待て、まだ登場してないヤツのライバルがたくさんいる。やっとモーターのコイルがあったまってきたところだぜ!(?(c)金田/「AKIRA」より)(尾崎一男)
監督 | 平川雄一朗 |
評価 | 3.18 |
解説
白井カイウ、出水ぽすかのベストセラーコミックを映画化したサスペンス。自分たちが鬼の食料になると知った子供たちが、決死の脱出に挑む。メガホンを取るのは『春待つ僕ら』などの平川雄一朗。『賭ケグルイ』シリーズなどの浜辺美波、『万引き家族』などの城桧吏、ドラマ「神酒クリニックで乾杯を」などの板垣李光人らが出演する。
あらすじ
「グレイス=フィールドハウス」という児童養護施設でママと呼ばれるイザベラのもと、幸せに暮らしていたエマ(浜辺美波)、レイ(城桧吏)、ノーマン(板垣李光人)は、里親に引き取られる年齢になり外の世界で生活することを望んでいた。ある日、施設を出るコニーに忘れ物を渡そうと近づいてはならない門に向かったエマとノーマンは、コニーが鬼に献上する食料として出荷されるのを目撃する。ここは鬼のための食用児を育てる施設だった。
監督 | マイケル・アンダーソン |
評価 | 3.60 |
解説
時は1872年、まだ飛行機も出現していない時代。イギリスはロンドンの社交クラブで、英国紳士フォッグ氏はひょんなことから“80日間あれば世界一周できる”という賭けにのり、なんと2万ポンドという大金を賭け、自ら実証のための大冒険に出ることになる。さっそくフォッグ氏はパスパルトゥーを従者に従えロンドンを出発する。マルセイユへ向かう途中、汽車が止まってしまい、2人はなんとか気球を調達して先を急ぐ。ところが、気球は風に流されてスペインへ。そして、パスパルトゥーはそこで、闘牛をするハメになってしまう…。
監督 | マーティン・キャンベル |
評価 | 4.04 |
解説
英国諜報部に属する敏腕スパイ、ジェームズ・ボンドの活躍を描く人気スパイ・アクションのシリーズ第21弾。原点に戻った今作ではボンドが殺しのライセンスを持つ“007”になる前の物語から始まり、国際テロ組織の壊滅が初任務となるボンドの奔走を活写する。6代目ボンドに『ミュンヘン』のダニエル・クレイグ、ヒロインのボンドガールに『ルパン』のエヴァ・グリーン。豪勢なカジノを舞台に繰り広げられる駆け引きがスリル満点。
あらすじ
英国諜報部MI6のスパイである‘00’の地位に昇格したジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、最初のミッションとして国際テロ組織のネットワークを絶つ任務を課される。テロ組織の資金源であるル・シッフルと接触を命じられたボンドは、モンテネグロのカジノでル・シッフルと高額の掛け金のポーカー対決を開始する。
映画レポート
ジェームズ・ボンドが若返って原作の1作目を映画化するというから、昔の話に戻るのかと思ったら、時代は今だ。それもそうだね、今さら冷戦の時代に戻ったってリアルな話は作れないものね。悪役ル・シッフルは、原作ではソ連の命を受けたフランス共産党系労組の地下の会計責任者。そのル・シッフルを、各国のテロ組織から預かった金でマネー・ゲームをするファンドの経営者に変えたところが何ともニクイ。ストーリーや人物配置はほとんど原作通りなのに、この一点で紛れもなく現代の話になった。さすがポール・ハギスが脚本に加わっただけのことはある。
さて、新ボンドのダニエル・クレイグだが、歴代ボンドの中では飛び抜けてスタント能力が高い。チョイ悪イメージも手伝って、007に昇格したばかりの、功名心にはやる向こう見ずな若造という感じがよく出ている。ヌードにも耐えられる逞しいボディ、アクション・シーンのハードさ、派手さは文句なし。新ボンドの門出を祝って惜しげもなく製作費をつぎ込んだようで、正月映画らしいご馳走感もたっぷりだ。これで彼がもう少しロマンチックな容貌だったらねえ。今回はボンドの恋が太い柱になっているだけにそこが玉にキズ。これってないものねだりかしら。(森山京子)
監督 | レニー・ハーリン |
評価 | 3.56 |
解説
雪のロッキー山中を舞台に、紛失した1億ドルの現金を手中にせんとする武装強盗団と山岳救助隊員の戦いを描いたアクション大作。ある日、ロッキー山脈からSOSが入る。山岳救助隊員がひとりで救出に向うが、それは雪山に散った3個の現金入りのトランクを回収するために武装強盗団が張った罠だった……。舞台設定をフルに活かしきった垂直状況のアクション・シーンは実際に4000メートルの標高イタリア・ドロミテ山脈で撮影している。「ダイ・ハード2」のL・ハーリン監督作品。
監督 | ジョー・ペナ |
評価 | 3.89 |
解説
『偽りなき者』やドラマシリーズ「ハンニバル」などのマッツ・ミケルセンが主演を務めたサバイバル。事故で極寒の地に取り残された男が生き延びようとする姿を描く。説明的な表現を排し、マッツ演じる主人公が迎える危機的状況をリアルに表現。ブラジル出身のジョー・ペナ監督が初めて長編のメガホンを取り、「ハンニバル」などのマーサ・デ・ラウレンティスが製作総指揮として参加している。
あらすじ
飛行機事故で北極地帯に不時着したパイロットのオボァガード(マッツ・ミケルセン)は、壊れた飛行機をシェルター代わりにし、白銀の荒野を歩き、魚を釣り、救難信号を出しながら救助を待っていた。しかし、救助に来たヘリコプターも強風のため墜落し、女性パイロットが大けがをする。瀕死の彼女を救うため、オボァガードは自力で窮地を脱しようとする。
映画レポート
冒頭の15分間が、この映画がわれわれ観客に突きつける「決意表明」だ。北極のどこかと思しき(原題が「Arctic(北極)」であること以外に場所の説明はない)極寒の雪景色の中で、ひとりの男が地面の氷を黙々と削っている。それが俯瞰のショットで大きな「SOS」の文字だとわかった時に、われわれはこの男が遭難したという事実を知らされる。
男は不時着した飛行機にたった一人で暮らしていて、右足のひどい凍傷から、決して短くない期間を一人で過ごしてきたことがわかる。いや、「わかる」は言い過ぎた。画面に映るわずかな情報、凍結した湖で魚を捕り、手回し式の通信機で救助信号を送る男の淡々とした日常から、この男はもう長い間この生活を耐え忍んでいるのだろうとかろうじて想像するのである。
つまりこの映画は、ほとんど言語に頼らず、徹頭徹尾、目の前に広がるシチュエーションだけで物語とエモーションを伝えようとしているのだ。全編を通してセリフはわずかしかないが、日本語の字幕をすべて消し去っても、われわれ日本の観客はこの映画が描いていることをほぼすべて理解できるし、「北極にひとりぼっち」という極限のサバイバルをわがことのように体感できるだろう。
マッツ・ミケルセンが恐るべきストイックさで演じている遭難者の、わずかな希望をつなぎ止めるような努力の日々は、映画が始まってほぼ15分後に、大きな危機を迎えることになる。おそらくあちこちの映画紹介にある程度のあらすじが書かれているだろうが、ここでは具体的に触れない。ただ、男がさらなる危険に身を投じるのっぴきならない気持ちは手に取るようにわかる。なぜなら「希望」と「失敗」を天秤にかけて「希望」を信じずにはいられないのがわれわれ人間だから。
監督は本作が長編映画デビューとなるジョー・ペナ。ブラジル出身のミュージシャン兼YouTuberで、オモシロ映像を作りまくってCMや映画にステップアップしていった人気者だ。普段は陽気で饒舌なペナが、みごとなまでにムダをそぎ落とした寡黙な映画をものにした。実際の撮影は、激変する天候など幾多のトラブルに見舞われ、劇中の主人公さながらに苛酷だったというが、大雪原を映したロングショットのバリエーションの豊かさによって主人公の寄る辺ない心の動きを伝える描写力の豊かさに触れて、スゴい映画監督が現れたものだと感嘆せざるを得ない。(村山章)
監督 | ロベルト・シュヴェンケ |
評価 | 2.58 |
解説
『G.I.ジョー』シリーズの第3弾となるアクション。戦闘エキスパートチーム「G.I.ジョー」のメンバー、スネークアイズが暗殺された父の敵を討つために日本に渡る。メガホンを取るのは『ちいさな独裁者』などのロベルト・シュヴェンケ。『クレイジー・リッチ!』などのヘンリー・ゴールディング、ドラマシリーズ「ウォリアー」などのアンドリュー・コージ、『ファミリー・ツリー -血族の秘密-』などのウルスラ・コルベロのほか、平岳大、イコ・ウワイス、安部春香らが出演する。
あらすじ
日本の闇組織から命を狙われていた男を救ったスネークアイズ(ヘンリー・ゴールディング)。それがきっかけで、彼は600年にわたって日本の平和を守ってきた秘密忍者組織“嵐影”への入門を許可される。だが、嵐影は悪の抜け忍集団と国際テロ組織“コブラ”の連合軍による攻撃を受け危機的状況を迎えていた。スネークアイズは真の忍者になるべく、嵐影から下される三つの試練を乗り越えていく。その一方で、世界を揺るがしかねない忍者大戦が勃発しようとしていた。
監督 | 細田守 |
評価 | 3.75 |
解説
『おおかみこどもの雨と雪』や、アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされた『未来のミライ』などの細田守が監督を務めたアニメーション。“もうひとつの現実”と呼ばれる巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に、心に傷を抱え自分を見失った17歳の女子高生が、未知の存在との遭遇を通して成長していく。企画・制作は、細田監督らが設立したアニメーション制作会社・スタジオ地図が担当する。
あらすじ
高知の田舎町で父と暮らす17歳の女子高生・すずは周囲に心を閉ざし、一人で曲を作ることだけが心のよりどころとなっていた。ある日、彼女は全世界で50億人以上が集うインターネット空間の仮想世界「U」と出会い、ベルというアバターで参加する。幼いころに母を亡くして以来、すずは歌うことができなくなっていたが、Uでは自然に歌うことができた。Uで自作の歌を披露し注目を浴びるベルの前に、ある時竜の姿をした謎の存在が現れる。
映画レポート
「時をかける少女」(2006)公開から15年間、3年ごとに新作をつくってきた細田守監督の全部乗せプラスアルファのような作品――豪華絢爛なビジュアルと音楽に圧倒されながら、すごいところにたどり着いたなと驚かされた。大スケールの物語を紡ぐために途方もない物量が注ぎこまれた手描きと3DCG両輪のアニメーションは、映画をつくり続けてきたスタッフの情熱と蓄積があったから実現できたのだろう。
「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」(2000)、「サマーウォーズ」(09)と約10年おきにインターネット世界を題材にした映画を手がけてきた細田監督は、ネットが人の暮らしを変えることを肯定的に描いてきた。本作では「美女と野獣」を発想の原点に、ネットが当たり前のものとなった今の社会で生きる少女が現実と仮想の2つの世界で葛藤しながら成長していく。
主人公のすずは幼い頃に母を亡くしてから、大好きな歌が歌えなくなった引っ込み思案な17歳。彼女は仮想世界でフォロワー3000万人超えのバーチャル歌姫・ベルとして輝かしく羽ばたき、そこで「竜」と呼ばれて恐れられている謎の存在に出会う。美しい仁淀川と鏡川が流れる高知県の田舎町と、見ているだけで楽しくなるグラフィカルな巨大ネット都市「U」を横断しながら、ネット系のガジェットとそれを使った画面や動画がインサートされ、グローバル化した世界を舞台にSNSでありがちな振る舞いや炎上騒ぎなども軽やかに戯画化される。
大きくフィーチャーされた歌のほか、恋愛と友情、親子のドラマ、地方都市の風景など、これまでの細田作品にあった魅力的な要素と新しい挑戦がつめこまれ、「美女と野獣」のプリンセスと同じ名前であるベルが、心を閉ざして野獣のように振るまう竜と踊るシーンまである。サービス満点でエンタメ方向に振りきっているようにみえて、最後まで見ると映画の芯となる部分が刻みこまれているのも心に残った。(五所光太郎)
監督 | ジャウマ・コレット=セラ |
評価 | 3.60 |
解説
ウォルト・ディズニーが1955年に開園させた最初のディズニーランドに、オープン当初から存在するアトラクション「ジャングル・クルーズ」を題材にした冒険スペクタクル。ボートでのジャングル探検をベースに、アマゾンの不老不死の伝説を絡めた冒険譚(たん)を描き出す。主人公を『ワイルド・スピード』シリーズなどのドウェイン・ジョンソン、ヒロインを『メリー・ポピンズ リターンズ』などのエミリー・ブラントが演じる。
あらすじ
アマゾンの伝説では“奇跡の花”を手に入れた者は、永遠の命を授かると言い伝えられてきた。行動力と冒険心にあふれる博士リリー(エミリー・ブラント)は、その伝説に魅せられ、スリリングなアマゾンのジャングルへ冒険に向かう。彼女は観光客用クルーズツアー船の船長フランク(ドウェイン・ジョンソン)を旅の相棒として選ぶ。
監督 | 樋口真嗣 |
評価 | 2.22 |
解説
人間を捕食する巨人と人類との壮絶な戦いを描いた諫山創の人気コミックを基に、『巨神兵東京に現わる 劇場版』などの樋口真嗣が実写映画化したアクション大作。100年以上前に出現した巨人が巨大な壁をぶち破り、再び侵攻してきたことから、巨人対人類のバトルが繰り広げられる。エレンを『真夜中の五分前』などの三浦春馬が演じるほか、長谷川博己、水原希子、石原さとみ、國村隼といったキャスト陣が集結。原作にはないキャラクターも登場するなど劇場版ならではの展開や、巨人のビジュアルやすさまじいバトルの描写も見どころ。
あらすじ
100年以上前、人間を捕食する巨人が現れ、人類のほとんどが食べられてしまった。生き残った者たちは巨人の侵攻を阻止すべく巨大な壁を3重に作り上げ、壁の内側で暮らしていた。エレン(三浦春馬)やミカサ(水原希子)もそんな中の一人だった。そんなある日、100年壊されなかった壁が巨人によって破壊されてしまう。
映画レポート
鳴り物入りのハリウッド大作が居並ぶ今年のサマーシーズン、映画ファンの“期待”と“不安”を最もかき立てているのが本作だろう。国内外で社会現象的ブームを巻き起こしたコミック&TVアニメの実写映画化。前後編の2部作とはいえ、原作の緻密な世界観&キャラクター描写をすべて受け継ぐのは到底不可能だ。例えば主人公エレンは、少年時代に母親を巨人に食われたトラウマのエピソードが省略され、やり場のない苛立ちを抱えながら“壁”の外に憧れる若者として描かれている。
巨人の描写に関しては申し分ない仕上がりだ。序盤に出現する筋肉組織が剥き出しの超大型巨人、その異形の風貌と迫力に圧倒され、ただ愕然とスクリーンを見上げずにいられない。その後ぞろぞろと壁の内側に侵入してくる通常サイズの巨人たちは、呆けたような表情で人間たちを食べて食べまくる。這いずり巨人、女巨人、赤ちゃん巨人まで登場させ、この世界観の揺るぎない根幹である“とてつもなく巨大で理不尽な脅威”の映像化は成功したと言えるだろう。軍艦島ロケの効果も上々だ。
その半面、物足りなかった点もある。とりわけアニメ版では人類が巨人という“理不尽な脅威”に対抗するため、憲兵団や調査兵団が特定のミッションに挑む様が長大なシークエンスとして描かれ、集団活劇としての手に汗握るスリルを呼んだ。同時に、それらの難易度の高いミッションの成否がこの世界における絶望と希望の分かれ目となり、登場人物の死に物狂いの頑張りが共感を誘った。その点、今回の実写版でも超大型巨人に破壊された壁を塞ぐミッションが軸になっているものの、行き当たりばったりにクライマックスになだれ込んでいく印象がぬぐえない。立体起動装置を駆使した飛翔アクションが、せっかくの実写化でありながらアニメのように見えたのも微妙だった。
しかしながらミッションはまだ道半ばであり、人類の“反撃”はこれからである。はたしてエレンらは調査兵団として“壁の外”に飛び出すのか。そんな今後の展開への想像もあれこれ膨らまされる前編だった。(高橋諭治)
監督 | クリス・バック |
評価 | 3.66 |
解説
アンデルセンの童話「雪の女王」をヒントに、王家の姉妹が繰り広げる真実の愛を描いたディズニーミュージカル。触れた途端にそのものを凍結させてしまう秘密の力を持つ姉エルサが、真夏の王国を冬の世界に変えてしまったことから、姉と王国を救うべく妹アナが雪山の奥深くへと旅に出る。監督は、『サーフズ・アップ』のクリス・バックと『シュガー・ラッシュ』の脚本家ジェニファー・リー。愛情あふれる感動的なストーリーはもちろん、美しい氷の世界のビジュアルや個性的なキャラクター、壮大な音楽など、ファンタジックな魅力に酔いしれる。
あらすじ
エルサとアナは美しき王家の姉妹。しかし、触ったものを凍らせてしまう秘められた力を持つ姉エルサが、真夏の王国を冬の世界に変化させてしまった。行方不明になったエルサと王国を何とかすべく、妹のアナは山男のクリストフ、トナカイのスヴェン、夏に憧れる雪だるまのオラフと一緒に山の奥深くへと入っていく。
映画レポート
主題歌賞、長編アニメーション賞のオスカー2冠に輝き、全世界興収ナンバーワンアニメの座も射程圏内ときては、しばらくディズニーアニメから遠ざかっていた向きも放っておけないだろう。この大成功をもたらした最大の理由は、もちろんブロードウェイの一流スタッフ・キャストを起用して、大人も堪能できるミュージカルに仕上げたことにある。
雪の女王となるエルサ(トニー賞女優イディナ・メンゼル)がオスカー受賞曲「Let It Go」を歌い上げるなか、ディズニーならではのハイクオリティのCGアニメで氷の城が築き上げられていく壮麗さ。ディズニーアニメ初のWヒロインの対照的なキャラと苦悩を見せるアナとエルサのデュエットの重厚さ。その迫力はどれも期待以上。そうした熱唱系ナンバーで高揚させ、夏に憧れる奇妙な雪だるまオラフが歌うコミカルなナンバーで楽しませるあたりは、さすがディズニー。アメリカでは観客がスクリーンに合わせて一緒に歌える〈Sing Along Version〉が公開されて、さらに興収を伸ばしているというのも頷ける。いや、ほんと、思わず熱唱したくなる「Let It Go」の威力、恐るべし。
わかりやすい「善と悪」の対立ではなく、「愛と恐れ」を描く物語もまた巧い。ディズニー・クラシックの伝統を引き継ぐ“王子様のキス”を織り込んだり、アナと冒険をともにするオラフの無償の愛に目頭を熱くさせたりしつつ、現代社会でも数々の悲劇を生んできた「孤立」を避けるためにはどうあるべきかにも気づかせるのだ。子供も素直に楽しめる世界だが、大人ならひねりの効いたストーリーやユーモアに感心せずにいられなくなる。これでアナを取り巻く2人の男子キャラが日本人の目にもイケメンに見えるデザインだったら、女子的にも萌えだったのだが……。とはいえ、最初はアナにも不気味がられるオラフといい、それぞれの内面が伝わるキャラクターデザインはやはりお見事。今度の冬は、オラフ型の雪だるまが増えそうだ。(杉谷伸子)
監督 | クリス・バック |
評価 | 3.78 |
解説
第86回アカデミー賞で歌曲賞、長編アニメ映画賞を受賞した『アナと雪の女王』の続編。姉エルサの氷と雪を操る力の秘密に迫る。前作に引き続き、監督をクリス・バックとジェニファー・リー、エルサ役の声優をイディナ・メンゼル、アナ役をクリステン・ベルが務めた。
あらすじ
凍てついたアレンデール王国を救い、確固たる絆で結ばれたエルサとアナの姉妹は、幸せに暮らしていた。ある日エルサは、自分にしか聞こえない不思議な歌声を耳にする。その歌声に導かれるように姉妹は仲間の山男クリストフ、雪だるまのオラフと一緒に旅に出る。
映画レポート
社会現象を巻き起こした前作から5年。ついに続編がキター!
アレンデール王国の女王となった姉エルサは、妹アナと固い絆で結ばれ、平和な日々を送っていた。が、あるときエルサだけが“不思議な歌声”を聞く。「この平穏を脅かしたくない」と耳をふさごうとするが歌声は強まり、ついに王国に危険が迫る。エルサはアナと、アナの彼氏であるクリストフ、雪だるまのオラフ、トナカイのスヴェンとともに歌声に導かれ、旅に出る。それは自身を知るための壮大な冒険の始まりだった――。
なぜ、エルサにだけ力が与えられたのか? それに二人の両親はどうして亡くなったの? 前作で残されていた意外に大きな謎を解明する続編。物語の必然性は十分だ。
まず印象的だったのは音楽。「未知との遭遇」のあの5音階のごとく印象的な“歌声”は冒頭から耳に残り、それが主題歌へとつながっていく。ビジュアルはさらに美しく壮大に、なめらかになり、エルサの魔法能力も格段にパワーアップ。 風・火・地・水の精霊が登場する世界でさまざまな試練をクリアしていく展開は、RPG的なワクワクも含んでいる。もちろんおしゃべりオラフのユーモアも健在だ。人気をかっさらいそうな、新キャラも登場する。
前作で「ありのままに」と自分を肯定し、解放したエルサだが、やっぱりちょっと心配性で、なんでも一人で抱え込もうとする気質は変わっていない。そんな姉を補完するのが、妹アナの存在なのだ。本作ではアナがよりしっかり者に成長し、ときにエルサを?咤し、正しき方向に導く。前作はエルサのめざめ、今回はアナのめざめ、と言えるかもしれない。
そして旅の終わりに明らかになる重大な真実は、大きなメッセージを含んでいる。「過去の過ちを認め、正さなければ、未来はない」――アナ雪世代の子どもたちは、きっと正しく受け取ってくれるに違いない。(中村千晶)
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